巨人 出口王仁三郎の生涯
百瀬明治著、『巨人 出口王仁三郎の生涯』、勁文社「大文字」文庫、2001年を読む。 なお、この本は、『出口王仁三郎の生涯 -- カリスマ性と合理性をあわせもつ男』、PHP研究所、1991年の文庫版である。
出口王仁三郎は、大本教では「聖師」と呼ばれ、開祖・出口なおとあわせて教祖と呼ばれている。 本書は、その出口王仁三郎の伝記である。
大本教は、明治25年に、出口なおが神がかって、「お筆先」と呼ばれる自動書記をはじめたことに端を発する。 そして、もともとはそれを読み解く審神者(さにわ)として、出口なおと出会った出口王仁三郎が、体制を整えていき、大教団に成長する。 そして、この教団は、大正10年と昭和10年に、国家から徹底的な弾圧を受けるまでになる。
しかし、実のところ、わたしには大本教の魅力がさっぱりわからない。 当時、文化人や軍人も含む多くの人々を集めた大本教だが、その基本となる教えは、わたしの理解の範囲では、基本的に天皇中心とした国家だったり、万教同根だったり、「この世の立替が起こる」だったりする。 また、非常にわかりにくく、とにかくやたらと分量の多い予言書がある。 そして、大正日日新聞のスポンサーになったり、いろいろと出口王仁三郎が奔走してみたり、浅野和三郎のようなインテリで過激な論調を展開する人材を擁していたりした。 それにしても、それらは国家から二度も弾圧を受けるほど、人心を集めるくらい魅力的なことだったのだろうか。
この疑問は、本書『巨人 出口王仁三郎の生涯』を読んでも、解けないままだった。 本書に描かれている出口王仁三郎は、とにかく人目をひくでかいことに挑戦する(もちろん、成功もするが、失敗もたくさんする)大人物で、いいことも言うけれど、突飛な言動が目立つ。 とにかく、話題に事欠かないおもろい人物である。 しかし、修行者であり、術者であり、神秘家ではあるのだろうが、不思議と宗教性というか、教えというか、そういう側面は目立たない。
藤木稟のミステリー、《朱雀》シリーズにも出口王仁三郎は出てくる。 それで《朱雀》シリーズを特集したムック ROMAN ALBUM《異界 VOL.2》『朱雀&魔都東京』、徳間書店、2000年が出ているが、その中に藤木稟本人が「出口王仁三郎の裏神業」という大論文を書いている。 この入れ込んだ文書においても、魅力的に描かれているのは、出口王仁三郎の宗教性というよりはキャラクターである。
しかし、ジャパン・ミックス編、『歴史を変えた偽書 -- 大事件に影響を与えた裏文書たち』、ジャパン・ミックス、1996年という本がある。 この本には、ホラー作家で、国書刊行会勤務時代にクトゥルーの翻訳を送り出した朝松健に取材した「オカルト業界の懲りない駄々っ子たち」という記事が載っている。 これを読むと、未だに大本教に関してはいろいろと利害が対立し、複雑なことにもなっているらしい。
また、老舗自己啓発セミナー est の流れを汲むランドマーク・エデュケーションとの関係で、自己啓発セミナー相談掲示板よりこんな話も・・・。
たぶん、時代背景が実感がわかないせいもあるのだろうが、大本教と出口王仁三郎に関しては、まだまだわたしにはわからないことが多い世界だと、今回、改めて再認識した。
なお、本書で紹介されている非常に個性的な出口王仁三郎の焼き物は、大本教のサイトで見ることができる。
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