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2004.01.12

ブッシュの「聖戦」

エリック・ローラン著、藤野邦夫、山田侑平訳、『ブッシュの「聖戦」 -- 宗教、ビジネス、闇のネットワーク』、中央公論新社、2003年を読む。

アメリカがイラクをなぜ攻撃する必要があったのかを、理解することは困難だ。 アメリカから出る声明は、自分たち正義の味方が悪をこらしめるための戦いであったといった、あまりに勧善懲悪な脚色により、素直に信じるには抵抗がありすぎる。 そして一方、イラク側の状況は混沌としている。

そんなアメリカのイラク攻撃を実行することになった、ジョージ・W・ブッシュとその仲間たちの徹底批判を行ったのが本書である。 この本では、原理主義的で過激なアメリカのキリスト教福音派、そして統一協会とのブッシュの深い関係、周辺を固めている極右保守な人脈、ユダヤ教--キリスト教--イスラム教の間の複雑な感情のもつれと思惑と経済を巡るイスラエル情勢、石油や軍需産業とのコネクションなど、これでもかというくらい裏の事情が挙げられている。

もしもこれらが本当に事実だとしたなら(仮定)、皮肉にもブッシュ自らがなぞらえたように「十字軍」の蛮行をふたたび繰り返してしまったことになるような気がする。

本書の全体的な信憑性はともかく、個人的には、ブッシュと過激だったり議論が多かったりする宗教団体との関係は、非常に興味深かった。 本書でよく出てくるのは、キリスト教の中でもボルテージの高いリバイバル派やペンテコステ派、それからアメリカ南部の保守右派だ。 過激な宗教と過激な右翼思想をからめたサンデー・プロジェクトとか徹子の部屋とも言うべき番組がアメリカでは放送されているが、これに出てくるテレビ伝道師の多くは、リバイバル派やペンテコステ派だという。 さて、創造論VS進化論が未だに大きな問題になるこの国の明日はどっちだろう。

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コメント

 イラク戦争について,そして日本社会の将来ビジョンと自らの生き方について,社会人たちと数回の話し合いを持っている。それもあって,本書『ブッシュの「聖戦」―宗教,ビジネス,闇のネットワーク―』を借りて,昨日(2004.1.16)から読み始めた。この冬もまた何冊かの本を,例のように読み出したまま積み上げている。次々と購入する読まれぬままの本が山になっている生活風景の中で,この本は読み出しやすかった。そして,実にジャーナリスティックで刺激的かつ,おもしろい。実際,アメリカのしかけた戦争について,アメリカ人の友人らに,メールやチャットで話題をふったことはない。しかし,モルモン教でフリーメーソン,根っからの愛国主義者である友人の一人は,いったい現在のイラク戦争をどのように見なしているのか,ちょっと聞いてみたい気になった。まだ本書を全部読み終わってはいないが,小泉の靖国神社参拝や,近年のナショナリズムリバイバルな日本の情勢もまた,本書に描かれる米の動向と同様,戦後60年の間に着々と準備されたシナリオであったのかという自国への政治的関心をも引き出される。さらに,今回の「戦争」に関してのみ言えば,世論を醸成する言論闘争において,朝日新聞は不明瞭な,保留という姿勢によって,既に読売新聞に負けていると言えないだろうかという,政戦を背景とした,研究所やジャーナリストの言論合戦までも意識させられることになった。日頃新聞が,単なる都合のいい情報の伝達媒体であるということ以上に,読者の論調を形成するものであるという自明のことが,私を含め,ほとんど紙の新聞を読まなくなった人々にとっては,なおさら希薄となっている世相についても考えさせられた。時代というものが,人を飲み込んでいくということ。その政情への抵抗策として,子飼いの従業員である一個の弱者は,政治や社会に対する確固とした理念や主張もなく,黙し,巨大な金と(それがたとえ強力な思い込みであっても)権力に,寄らば大樹の陰と積極的に従うか,「面従腹背」するという消極的な姿勢しか残されていないのかという私的な現在の課題を再認識させられる。
 この本を読み終えたら,次は,積まれた本の中から,W.G.ゼ-バルト『アウステルリッツ 』を読んでしまい,関連して,小熊英二『〈民主〉と〈愛国〉戦後日本のナショナリズムと公共性 』 ,今村浩・三好陽『巨大国家権力の分散と統合―現代アメリカの政治制度』,ジェイムズ・バムフォード『すべては傍受されている―米国国家安全保障局の正体―』を春までには読みたい。それまでに,イラク国内は金に満たされて安定するだろうか。

投稿: Mew | 2004.01.17 10:20

Mewさん、こんにちは。

ご友人個人よりは、末日聖徒イエス・キリスト教会としては現ブッシュ大統領支持なのかとか、イラク戦争に関してどういうスタンスなのかということに、わたし個人としては興味があったりします。おそらく保守寄りだと想像していますが。

投稿: ちはや | 2004.01.17 18:45

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