魔法使いとリリス
ハヤカワ文庫FTの創刊25周年記念企画、プラチナ・ファンタジィの第一弾、シャロン・シン著、中野善夫訳、『魔法使いとリリス』、ハヤカワ文庫FT、2003年を読む。 原題は、"The Shape-Changer's Wife"となっていて、この物語で焦点があてられているのは、姿を変える(Shape-Change)魔法。
若き魔法使いオーブリイは、姿を変える魔法を習いたくて、第一人者のグライレンドンに弟子入りする。 歪んだ性格をしたグライレンドンの埃だらけの家には、妻のリリス、使用人のオリオン、メイド(?)のアラクネたちが住んでいたが、彼らの様子はどこかおかしい。 オーブリイは、変な女性リリスにいつしか恋をして・・・というお話。
この物語の秘密は、読み進めるうちにすぐに理解できるはず。 秘密を解き明かすのではなく、すぐには語られない秘密を前提として、プロセスを楽しむ物語なのだろう。
愛を知るというのは、本当は一体どんなことなのか。 そして、愛の訪れる、まさに奇跡的な瞬間・・・。
決して結ばれない相手を、強く恋してしまった苦い気持ちを知るならば、この物語からなにがしかを感じられることだろうと思う。
最初、魔法は何でもできるすばらしいものだと思っていた。
その力を自分のものにしたいと思っていた。
でも、本当に力を手に入れるということ、それは魔法の本当の意味、世の中の理を知るということ。
その味は、きっと苦いのだろう。
そして、若者は大人になる。
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