美亜に贈る真珠
梶尾真治著、『梶尾真治短篇傑作集 ロマンチック篇 美亜に贈る真珠』、ハヤカワ文庫JA、2003年を読む。 なお、梶尾真治短篇傑作集には、他にも『ノスタルジー篇 もう一人のチャーリー・ゴードン』と『ドタバタ篇 フランケンシュタインの方程式』がある。
梶尾真治は、『OKAGE』や『黄泉がえり』などで近年話題を集めている作家。 個人的には、地球上最初の生物からの進化の記憶をすべて受け継いでいる女性、エマノンを描いた《エマノン》シリーズがお気に入り。
この『美亜に贈る真珠』には、切実に愛することをテーマにした作品が、1971年のデビュー作「美亜に贈る真珠」から、1998年のものまで、7篇収録されている。 これを読んで、梶尾真治は、失われてしまったり、決して手に入らなかったり、必ず訪れる定めの別れといった、本当に胸が痛くなるような愛の物語を描くのが実にうまいと改めて思った。 《エマノン》シリーズの多くの作品でも、これは共通である。
個人的にちょっと残念だったのは「玲子の箱宇宙」だけは、作品のトーンが大きく異なっていたこと。 なお、この作品と「梨湖という虚像」で出て来た「フェッセンデン」の元ネタ、エドモンド・ハミルトンの『フェッセンデンの宇宙』が、河出書房新社の奇想コレクション・シリーズから中村融編訳で刊行予定で、これも大いに期待。
関連サイト: Anima Solarisより、著者インタビュー: 2001年7月 「さすらいエマノン」 梶尾真治
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