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2004.03.02

インターネットにおける行動と心理

A. N. ジョインソン著、三浦麻子畦地真太郎、田中敦訳、『インターネットにおける行動と心理 -- バーチャルと現実のはざまで』、北大路書房、2004年を読む。

この本は、2003年に原書が出たばかりの、インターネットにおける人間のふるまいに関する研究書だ。 同じカテゴリーに属する本には、パトリシア・ウォレス著、川浦康至、貝塚泉訳、『インターネットの心理学 -- ネット上で人の行動はどう変わるのか』、NTT出版、2001年がある。

この2つの本の特徴は、幅広くインターネットに関する研究が調査され、紹介されているところだ。 世の中には、「自分でこんな研究やってみました」とか、非常に狭い知り合いの研究者づきあいの範囲で研究が紹介されているだけの本というのは、残念ながらいっぱいあるが、これらの本はそうではない。

個人的には、論旨の明確さとか、わかりやすさという点では、『インターネットの心理学』だと思う。 これは読んでみて、とてもいろいろと考えさせられるところが多かった。 一方、『インターネットにおける行動と心理』の方は、話がすっきりとはまとめられてはいなくて、行きつ戻りつするような感じがした。 ・・・いや、しかし、これはむしろ、現実世界の複雑さが如実に現れていると言えるのかもしれない。 非常に最近の研究報告の占める割合も高く、それらは「インターネットって、センセーショナルに取り上げられてきたけれど、実はそれらはあまり正確じゃない。 きちんと調べると、いろいろな要因があってね。 でも、それでも特筆すべきこんな傾向もあるんだよ。」という感じ。

本書で取り上げられているのは、メール、チャット、ニューズ・グループ、WWWなどの他に、日本ではあまりなじみのないMUDやMOOなど。 MUDやMOOは、たとえばラグナロクオンラインのようなMMORPG(オンラインRPG)の映像なし版だと言えばわかりやすいだろうか。 取り上げられている側面としては、個人指向かそれとも集団同調指向か、けんか、個人情報の偽装(ネカマ、偽のプロフィールや写真)、心理的影響、ポルノ、自己開示、社会性、ネットでの出会い、恋愛、セックス、支えあいなど多岐に渡る。

ふと読んでいて思ったのだが、LambdaMOOを使った、サイバーセックス部屋の記述があるのだが、これはLambdaMOOを使ったことがない人にはかなりわかりにくかったのではないかと。 いや、そう考えると、ニューズ・グループも、見たことがない人にとっては想像しにくいかもしれない。 そもそも、ネットのサービスは、いろいろと技術上の制限があって、あまり人間工学的に素直なものになっていないので、体験したことがない人にわかりやすく伝えることは難しいのかもしれない、という気もしてきた。 ちなみに、ネットのサービスの技術的な制約が、利用者をどういう方向に誘導するのかというのは、本書の話題の一つだ(あまり、アフォーダンスを連呼するのは、どうかと思うが)。

特に読んでいて衝撃的だったのは、文書、電話でさえ、今日のインターネット利用批判の上を行くかもしれない批判にさらされていたという話だ。 プラトンが書き言葉は心を弱めるなどと批判していたことは全く知らなかった。 また、電信技師の間で、今日のインターネットで出会って結婚とでもいうべき事例が見られたという話もびっくりだった。 これらは、技術が普及すると、初期の頃には誰も思いつかなかったような使い方がどこかで見つかって、それが場合によっては主流にさえなるということを意味している。 そして、初期の頃に懸念されたような悪夢もまた、同様な道をたどるのだろう。

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