天より授かりしもの
アン・マキャフリー著、赤尾秀子訳、『天より授かりしもの』、創元推理文庫、 2004年を読む。
この本は、中世風の世界を舞台にしたファンタジー。 この世界では、人は天賜(ギフト)と呼ばれる力を授かることがある。 しかし、どんな天賜を授かるかは、そのときまで全くわからない。 主人公のミーアン曰く、「天賜はそのときどき、創造主の思いつくままに授けられるんだもの。だからといって、天賜を無視することなんてできない。」というわけ。
さて、お話は、召使いがみんなやってくれる、王女という境遇に生まれたミーアンにとって、ハーブなどの植物を育むという天賜は、全くそぐわないものだった。 そんな生活と天賜との齟齬に悩まされて、ミーアンは身分を捨てて、森の奥に逃げ込んだ。 しかし、何もかもがはじめての、森での暮らしに途方にくれていた。 そのとき、ウィスプという鞭の痕が生々しい少年が現れる。 ウィスプと協力することで、森での生活がだんだんうまくいくようになる。 しかし、あるとき、市にでかけなくてはならなくなって・・・というもの。
この物語の主人公の王女ミーアンは、単に憧れだけで平民の生活に飛び込んで、ダメダメな結末を迎えるようなお姫さまではない。 本当に、森の生活に心の平安を見いだしているところが新鮮だった。 これをご都合主義ととるか、一人の女性の自己実現ととるかは、意見が分かれるところだと思う。 わたし個人としては、物足りないところもあるけれど、どちらかというと好印象だった。 また、物語の起承転結の「転→結」の部分が駆け足で、ややわかりにくかったのは、とってもいいお話だっただけに、ちょっと残念かも。 アン・マキャフリーに、こういう作品があったとは知らなかった。 『だれも猫には気づかない』(赤尾秀子訳、創元推理文庫、2003年)も読んでみようかと思った。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント