ブレイブ・ストーリー 〜新説〜
宮部みゆき原案、小野洋一郎漫画、『ブレイブ・ストーリー 〜新説〜(1)、(2)』、新潮社 バンチコミックス、2004年を読む。
宮部みゆきの『ブレイブ・ストーリー』(角川書店、2003年)は、傑作だと思う。 このお話は、ある日、幻界とこの世をつなぐ扉と出会った小学5年生の亘が、突然襲った不幸な出来事を解決しようと、望みを叶えてくれるという幻界にある運命の塔をめざして冒険するというものだ。 このレベルで見てみれば、『ブレイブ・ストーリー』の骨格は、普通のファンタジーやRPGと共通だ。 そして、普通、RPGは、冒険して、悪の大王を倒して、願いが叶えられて、おめでとうで、はい終わりだ。
でも、それでいいの? それが、宮部みゆきの問いだ。
そして、RPGではそうだ。 でも、現実の問題は、そんなに単純じゃない。 現実の世界では、「悪の大王」を倒しても、しばらくすれば、また次の「悪の大王」と戦うことになるだろう。 これは、問題を一つ解決しても、すぐ次の問題が現れると言い換えてもいい。 それから、そもそも倒すべき「悪の大王」さえいないかもしれない。 非常に微妙な立場の違いで、敵と味方にわかれることだってあるかもしれない。 ゲームは、時間さえかければ、たいていの人がクリアすることができる。 でも、現実には、クリアできる人が限られている問題だってある。 そして、大変だったり、問題を抱えているのは自分だけじゃない。
そんな問いがたくさん込められているのが、『ブレイブ・ストーリー』だ。
さて、本書は、その『ブレイブ・ストーリー』を原案にしたコミックだ。 そして、また、宮部みゆきの作品の初のコミックス化という記念すべき作品でもある。 とは言え、この作品は、宮部みゆき原案と言っているように、たとえば、亘が小学5年生でなく、中学2年生だったりというように、かなりアレンジが加えられていて、原作のイメージから随分異なったものになっている。
わたしは、原作を読んでいたせいか、違和感を感じた。 また、アレンジと言っても、強すぎる原作のパワーにふりまわされていて、ちょっと微妙な感じ。 そうは言っても、原作を知らなければ、普通に楽しめるような気もする。 だんだんのってきたような感じなので、次巻以降にも期待。
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