自由に生きる 創造的に生きる 上
菅靖彦著、NHKこころをよむ『自由に生きる 創造的に生きる -- 本当の大人になるには(上)』、日本放送出版協会、2004年を読む。
この本は、NHKのラジオ第2放送で日曜の午後に放送されている番組のテキストだ。 上巻の内容は、トランスパーソナル心理学の考え方を紹介するというもの。 具体的には、現代の社会と人間のおかれている状況に関する論評、ウィルヘルム・ライヒの「性格の鎧」、アブラハム・マズローの「欲求の階層説」と至高体験論、スタニスラフ・グロフのLSDおよびホロトロピック・セラピー、ケン・ウィルバーの「意識のスペクトル」と世界観というもの。 これは、ある意味、スタンダードなトランスパーソナル心理学の紹介だと思う。 個人的には、ここで紹介されている考え方を読んでいると、直感や体験やエピソードに基盤を置いているものもあり、実際のところどうなのという気が。
ところで、最後の回では、ケン・ウィルバーの「危険なカルトを見分ける基準」というのが紹介されている。 それは具体的には次のようなものだ。
- 前合理的である(呪いをかける魔術や動物を血祭りにあげる古代の供儀のようなものを実践形態として採用している団体)
- 永続的権威に率いられている(一人のカリスマが絶対的な権威をもち、集団を支配するような宗教)
- 正当性の根拠が単一の源に還元されている(集団のメンバーが正気がどうかを決める基準が一人のカリスマに委ねられている集団)
つまり、魔術的な行いをしたり、カリスマが存在したり、そのカリスマにみんなが従っている集団ということだ。 しかし、最初の項目に当てはまるのは、アメリカの都市伝説でよくある悪魔教かなんかのことだろうか。 それから、後ろの2つは要するに、一人の人間が支配している集団だと言っているわけで、ある意味、当たり前のことを言っているような気がする(でも、これは重要なポイントだ)。
これに加えて、世界を救うことを標榜する集団にも気をつけるべきであると述べられている。 しかし、この本の冒頭で紹介されているのは、まさに「地球を救う」物語なのである。 もちろん、冒頭の物語は、ウィルバーの用意したものではない。 ないけれどでも、その物語はユング派の心理学者が一般向きに書いた本に書かれているものであり、それが自分探しのエッセンスとして紹介されているのだ。
なんとも、判然としない気持ちになるのだった。
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