機械仕掛けの蛇奇使い
上遠野浩平著、『機械仕掛けの蛇奇(じゃき)使い』、メディアワークス 電撃文庫、2004年を読む。
この本は、《ブギーポップ》シリーズが有名な上遠野浩平の新作。 世界としては、『ぼくらは虚空に夜を視る』などの《ナイトウォッチ》シリーズの夢の世界に当たる。 つまり、舞台は本人にとっては現実としか思えない夢世界。 その一方で、現実世界では強力な敵との戦いが繰り広げられている。 今回の夢世界は、不思議な科学技術が発達した中世風の世界になっている。
お話は、帝国の皇帝になったローティフェルドは、結局、自分のしたいことは何もできず、唯一の心のなぐさめは、過去に世界を破壊し、鉄球に封じられた「闘争と破壊の化身」バイパーを眺めること。 そのバイパーの封印を解こうとしたところ、皇位を巡る争いに巻き込まれる。 そして、帝国の背後にあるものや、自分を転写したバイパーを通じて、自分が何なのかを見つけていくというもの。
初期の頃の上遠野浩平の作品では、登場人物の個性が見えにくく、読んだ後で名前を聞いても誰だっけ?という感じになることが多かったが、この作品の登場人物はそれぞれキャラクターが立っていて、それが物語の魅力になっている。 その一方で、たぶんこの作品はこの一作だけで完結だと思うが、伏線が使われないままに、物語が終わってしまったりもしている。
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