新ネットワーク思考
アルバート=ラズロ・バラバシ著、青木薫訳、『新ネットワーク思考 -- 世界のしくみを読み解く』、NHK出版、2002年を読む。
たとえば、世の中、いろいろなサイトがある。 それらのサイトがどのくらいリンクされているのかを調べてみると、ごく一部のサイトだけが異常に多いリンク数をかせぎ、残りのほとんどのサイトはどんぐりのせいくらべになっている。 この分布はf(x)=x-2〜-3のような形の分布になっている。 これは別にサイトの被リンク数に限らず、収入や、セックス・パートナー、免疫系、人脈、etc.とさまざまなことに当てはまる。 そういう現象が何故起こるのか、そのしくみはどうなっているのかといったことを解説したのが本書である。 これは、最近、orkutなどのソーシャル・ネットワークの話が流行しているが、そのベースにあるミルグラムの「小さな世界」の話などとも関係してくる。
著者は、理論物理学者で、これらの現象の解析に、量子場や統計力学の手法を活用しているところがポイントだと思う。 繰り込み群、スケール不変性、ボーズ・アインシュタイン分布などの知見によって、さまざまな現象が解読されていく様が、明確に語られていて、非常に興味深かった。 またこれは逆に、わたし個人にとっては、量子場の理論に別な視点からの理解が深まったと思う。
本書の主張は、基本的には単純だ。 たくさんポイントがあって、それが結ばれているような現象があったとする。 世の中のそういった現象の一部では、特定のいくつかのポイントに線が極端に集中し、残りのほとんどのポイントはせいぜい何個かの線で繋がっているだけである。 このことによって、あるポイントから、任意の別のポイントまで、何回のステップで到達できるかという回数が、小さい値におさえられ、「小さい世界」が実現されている。 このような現象は、ポイントがだんだん増えることと、新規のポイントができるときに、たくさん線が集中しているポイントと線を結びたがる傾向があるような場合に起こりうる。 こういう世界は、ランダムに発生する事故には強いが、特定の線が集中しているようなポイントを狙い撃ちする攻撃には非常に弱い。 そういうポイントに注目しておけという話だ。
たとえば、以前取り上げた、悪徳商法? マニアックスがGoogle Japanの検索に現れなくなった事件があった。 これに関しては、この他にもいろいろと経緯があったが、悪マニBeyond氏と一緒にウェディング問題を考える会が設立され、4月17日の第1回総会などを経て、現在、一応決着がついたかのように見えている。 この出来事のポイントは、インターネットの情報流通に関して、線が集中しているのはGoogleだったということだ。 これは、ボーズ・アインシュタイン凝縮が起こった状態のようなものだ。 このような状況では、別に末端のポイントに対応しなくても、その末端のポイントが繋がっている付近に存在している、線が集中しているポイントを抑えてしまえば十分だということだ。 現在のネットワークの特性を把握して利用した出来事だったと言えるだろう。
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