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2004.08.10

ダビデの心臓

スズキヒサシ著、『ダビデの心臓』、電撃文庫、2004年を読む。

これは、『レメゲトン』、別名『ソロモンの小さい鍵』の設定の一部を借りた、バトルロワイヤル系のファンタジー。 で、その設定は、むかし、ダビデが、自分の子どものソロモンを強くするために魔法をかけて、ダビデの心臓を持った最初の人間に変えた。 そして、そのソロモンに、毎週、ダビデの心臓を持った人間を与えた。 しばらくして、ソロモンは、ダビデの心臓を持った人間を72人集め、飢えさせて悪魔に変え、それを魔力で使役した。 ソロモンが死ぬときに、それらは封印された。 しかし、ソロモンの子孫はダビデの心臓を持ち、いつしか十分な資質を持った者が現れたときに、彼らは殺しあい、最後の一人がソロモンのような究極の力を手に入れることができる、というもの。 この設定は、著者のオリジナル色が強い。

この設定は、ロジカルにはちょっと首をひねるところがあるのだが、それがお話作りのためのものなのか、それとも何か深い仕掛けがあってこうなっているのかは未だ明らかでない。 そう、なんで明らかでないかというと、この本は、いきなり最後で「続く」になっているのだ。 一見、続き物でないようなタイトルだったので、単発ものかと思って読み始めてびっくりした。 途中で、話の展開が非常にのろいのが気になっていたが、まさか・・・。

それはともかく、お話は、そういう設定によって、ある日突然、ダビデの心臓を持った者同士で殺しあう羽目になった高校生の宮沢明日馬。 その戦いで、家族のほとんどにくわえて、幼なじみまで惨殺されてしまう。 更に、ダビデの心臓の持ち主は、生理的にダビデの心臓を喰いたくなったり、そうでなかったとしても1週間に最低一人の他のダビデの心臓の持ち主を殺して、その心臓を喰わないと、悪魔になってしまうという設定もあって、否応無しに戦いに巻き込まれる。 しかし、明日馬は、どうしても人として、他人の心臓を喰らったりしたくないと強く願う。 そんな明日馬の1週間を描いたのが、本書だ。

守るものがあるというのは、人を強くしてくれる。 しかし、それは守るものの存在を言い訳にしているからかもしれない。 守るものがない明日馬にとって、自分の行動の責任は自分で背負うことになる。 それを書き続けているのが本書のいいところでもあり、悪いところでもある。

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