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2004.09.13

現代アメリカの陰謀論

マイケル・バーカン著、林和彦訳、『現代アメリカの陰謀論 -- 黙示録・秘密結社・ユダヤ人・異星人』、三交社、2004年を読む。

本書は、原題が"A Culture of Conspiracy -- Apocalyptic Visions in Contemporary America"で、原書は2003年に出版されているという非常に新しい本。 9.11の話題までフォローされた最新情報満載の、陰謀論の文化を論じた本だ。 なお、本書で繰り返し取り上げられている爬虫類人の話は、まぎれもなく本書を出版した三交社から出ているし、訳者の林和彦氏自身も陰謀論者のマイケル・ベイジェントの本を訳したりもしているというところが、なんとも興味深い。

陰謀論というのは、結果的に反証不能だ。 なんでもかんでも勝手に、政府や異星人や秘密結社や左翼や右翼やカルト団体や・・・以下なんでも自分の嫌いな団体が、謀略を巡らしており、秘密の意図のもとに秘密の技術を用いて秘密の活動を行っていると主張する。 そして、大衆はだまされているが、自分とその少数の支持者だけは、その真実に気づいているという。 仮にこの主張が覆されても、その覆されたこと自体が、陰謀の証拠だとさえ主張する。 悪の敵対勢力はあまりに強敵で、そんな巨悪と正義のために闘うという、実にスリリングな日々が主張者と賛同者を待っている。

本書は、そんな陰謀論の世界を詳しく紹介している。 聖書の記述を強く信じ、キリストの再臨が本当に近いと考える人たちがいて、そういう人たちにとっては、今、まさに新世界秩序という黙示録的世界が展開しているように思える。 すると、世界は正義と悪の二大勢力の戦いが繰り広げられているはずだが、それは見えないところで途方もないスケールで行われているというのが、陰謀論の背景の一つ。 そこから、ユダヤやフリーメイソンの陰謀→機械を埋め込むタイプのマインドコントロール技術の実用化→異星人との密約といった、トンデモ陰謀論への展開は非常に素直だ。 そして、それは、本来非常に仲が悪いはずの、神智学の流れを汲んだオカルト文化、そしてそれを引き継ぐニューエイジ・精神世界的な文化とも徹底的に交じりあっていく。

本書を読むと、「ムー」などのオカルト雑誌(=「隠された知識」を紹介するという形式を持つ)の文化は、そもそも陰謀論と極めて密接に絡んでおり、不可分であることがよくわかる。 たとえば、「誰も知らなかった秘密」の記事が載らない「ムー」なんて、絶対にあり得ない。 そして、そういったノリでおもしろく読めるような真実のネタはそんなに存在しない。 すると、必然的に、極端で、刺激的な根拠がアヤシい陰謀ネタが満載になるというわけだ。

そういう陰謀論が、いかに豊穣でダメダメな世界を展開しているのかが、非常によくわかるのが本書だった。

また、黙示録の世界が進行していく様を現代的に描いたティム・ラヘイとジェリー・ジェンキンズの〈レフトビハインド〉シリーズ(いのちのことば社)は、ぶっとんでいておもしろそうなので読んでみようかという気分に。

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受信: 2005.04.02 01:30

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