崖っぷち弱小大学物語
杉山幸丸著、『崖っぷち弱小大学物語』、中公新書ラクレ、2004年を読む。
本書は、京大の霊長類研究所の所長から、東海学園大学の人文学部の学部長になった著者が、その奮闘と思いのたけを著わしたもの。 ちなみに著者の杉山幸丸氏は、現在70才ちかく。
少子化の波により、大学の入学希望者数よりも、大学の定員の数の方が多くなる時代がそこまでやってきている。 定員割れしている大学もあるわけで、極端な話、勉強を全然しなくても、大学に入ることは、どこでもいいと思うなら、十分可能だ。
それから、経済成長もほとんどないし、つぶれる会社も多々あるし、いろいろと見通しが悪くなってきている。 きょうび、一生懸命勉強して、いい会社に入って、最低限の安泰は確保できるというビジョンは成り立たなくなっている。
それらにより、大学には、全然、今までの内容の講義ではついてこれない人たちや、そもそも熱心に何かをするという習慣のない人たちが増えていくことになるだろう。
こういう状況の中では、大学の果たすべき役目は変わってくるし、当然、構成員の仕事も変化してくる。 大学の先生の仕事は、よく研究と教育だと言われる。 大学生の学力ややる気が下がれば、教育に力をそそぐ必要が出て来るだろう。 ところが、その一方で、研究の成果を厳しく問われるようにもなってきているようで、現場では努力が強いられていることだろう。
本書では、そういう状況の中で、特に厳しい大学の一員として、大学の仕事は教育で、「普通の学生」のためにがんばろうとした取り組みと、その取り組みの中で感じたと思われる不満を元にした提言(?)が書かれている。 そして、本書の結論は、大学の顧客である学生の将来、それを大事にして、努力しようという、非常に当たり前(のはず)のこと。 大学がつぶれていくような状況下で、それだけで大丈夫なのかという気が。
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