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2004.10.04

タロット大全

伊泉龍一著、『タロット大全 -- 歴史から図像まで』、紀伊国屋書店、2004年を読む。

この本は、タロットの歴史を非常に真面目に詳しく解説した本だ。 たくさんのタロットの絵が収録され、約600ページにも及んでいる大著である。 今まで読んだことがあるタロットの本の中では、一番おすすめの本。 ただし、占法の本ではないので、それを求める人向きではない。

タロットといえば、むかし、アレクサンドリア木星王という著者が、非常にたくさん本を出していた。 この著者による本の一冊に『タロット秘密解読』というのがあって、これは大陸書房から1985年に出たものだ。 この本には、トート、ゴールデン・ドーン、エテイヤ(エッティラ)、メイザースなどの、どちらかというと一般的でない、オカルト系のタロットが解説されていた。 タロットといえば、ウェイトのものがメジャーだが、どうもウェイトのデザイン・センスはいまいちだと、わたしは思っていた。 そんなとき、『タロット秘密解読』に載っていたエテイヤ(エッティラ)のタロットを見て、そのデザインが気に入り、後に購入した。

しかし、大アルカナ22枚のカードからして、通常のタロットから逸脱しているエテイヤ(エッティラ)のカードの占法は、よくわからないものだった。 たとえば、数秘術的なものを多用しているのだが、どうもそこに統一性がなく、かなりどうにでもリーディングできてしまうもので、一生懸命に解説を読んでも、結局なんだかよくわからないものだった(いや、そんなことを言えば、そもそもウェイトのカードだって、背景となる知の体系のようなものがあやふやで、よくわからないという話もある)。

ちなみに、こういう気分は、セラピーの勉強をしたときにも感じたことがある。 つまり、クライエントの抱えている問題の焦点となるものや、適切な処置を、セラピストはさまざまな情報から推測して判断するわけだが、その方法というのが、かなりいい言い方をすれば、どうにもサイエンスというよりはアートという感じだった。

それはともかく、『タロット秘密解読』で紹介されている、その他のタロットも、オカルト系の知識がちりばめられており、何を結局どうすればいいのかわからないけれど、とにかく奥深いものであるという雰囲気が伝わってきた。 その後、タロットを使ったパス・ワーキングという魔術的な手法があることを知った。 パス・ワーキングというのは、カバラの生命の樹を結ぶ線の一本一本を、タロットのカード22枚に見立てて、瞑想する修行のことだ。 それで、この手の修行か、魔術結社の秘儀参入のような体験をすれば、体験的かつストーリーとして体系だてられた背景を実感でき、カードのリーディングが深まるらしい(?)・・・、とその頃は思ったものだ。

また、魔術書の中には、タロットそのものを解説したり、逆にタロットを使って魔術を解説したりしているものがある。 たとえば、エリファス・レヴィの『高等魔術の教理と祭儀』(生田耕作訳、人文書院、教理篇 1982年、祭儀篇1992年)は、えらくもってまわった語り口で、タロットの札の順番に魔術の理論を解説したものだ。 あるいは、より近代的な内容としては、アレイスター・クロウリーの『トートの書』(榊原宗秀訳、国書刊行会、1991年)があるだろう。

・・・いやいや、そんなこんなな本を、結構、一生懸命、昔読んでいたことを思い出しながら、本書を読んだ。

本書は、タロットの歴史を紹介した本としても読めるが、タロットを中心にオカルトの歴史を紹介した本としても読める。 そもそもは、コスプレ大名行列を元にした遊戯用カードだったタロット。 それが、その本来の意味が忘れられた後に、エジプト起源の叡智を秘めたとかいう伝説が付加されて、占いの道具に。 更には、魔術の道具へと変化していく様子を、本書では詳しく紹介しているが、これは、まるで推理小説でも読むかの如く、非常に圧巻だ。 すごくおもしろかった。

タロットの本来の姿が忘れ去られた後、ド・ジェブラン、エテイヤ(エッティラ)、エリファス・レヴィ、ポール・クリスチャンといった連中が、根拠のない思い込み、あるいはセールス・トーク、または「何か」がそこにはあるに違いないという強い信念により、意図的あるいは非意図的に、その場ででっちあげた古代の叡智やオカルトの体系を次々と付け足していく。 更に、神智学、黄金の夜明け、クロウリーなどと合流することで、カバラや東洋の叡智といった要素が付け加えられていく。 そして、ユングやニューエイジにより、とにかくどこかなんとなく似ていれば、なんでもかんでも結びつけられ、自分探しや癒しのツールとしての側面も持ち合わせるようになって、今日のタロットの姿になる。

さながら、萌え絵のトレーディング・カードが、ゲームとして世界を席巻。 そして遠い未来、本来それが何だったのかが忘れられてしまう。 その後で、誰かがあるとき、そこに偉大な神秘が体現されていると、妄想してしまったのが発端となる。 時代を経る毎に、そこにどんどん神秘的要素が付け加えられて・・・といった感じか。 人間の不思議さ、おもしろさというものが、まじまじと感じられた。

タロットを知りたい人には、非常におすすめの1冊。 ものすごくよかった。

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