児童性愛者
ヤコブ・ビリング著、中田和子訳、『児童性愛者 -- ペドファイル』、解法出版社、2004年を読む。
本書は、デンマークで2000年に放映された児童性愛者協会の告発番組の取材を行った著者が、その過程を描いた本だ。 児童性愛者とは、少年や少女との性交を欲するもののこと。
なんと、デンマークには、結社の自由により、「子どもと成人間の性的関係に対しての世間一般の偏見を取り除くこと」を目的とした児童性愛者協会というものが設立されていたという話。 その協会に、児童性愛者を装った著者が潜入取材する。 協会の会合では、現行の法律がほとんど骨抜きであることが語られ、同じ性向を持った人々のネットワークが形成されている様を取材する。 更に、協会で知り合った人たちから、少女とのセックス・シーンの写真やフィルム、ビデオを紹介されたり、いかにして少年と性的な関係を作ったかを教えられたり、海外で少年や少女を買うかを紹介されたりする。
中でも衝撃的なのが、写真に写った少女を探してスウェーデンまで出かけて取材をした話だ。 当時、少女だった彼女らは、既に20代の女性。 両親から性的虐待を受けたりした女性が、当時のことを抱え続け、暗澹たる日々を送っている現実はあまりに厳しすぎる。
とにかく、すごい一冊だった。 著者が精神的苦痛に悩まされながら、取材を続けていたのが、伝わってくる。
なお、本書の訳者の中田和子さんには、セラピーと芸術による人間の解放を謳ったコミューンを作った、カルトAAO(Aktions-analytische Organisation)の内部告発である、ビョーエ・マッセン著、『楽園の奴隷』、河出書房新社、1999年の翻訳もある。 AAOのグルであり、ウィーン行動主義派の芸術家でもあるオットー・ミュールは、1991年にAAOの信者の幼女との関係により猥褻と未成年強姦の罪で7年間の懲役となった。 今年の春にウィーンの応用芸術博物館(MAK)でオットー・ミュールの展覧会が開催されたが、AAOのことが問題になり、波乱を呼んだ。
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