トリポッド 1 襲来
ジョン・クリストファー著、中原尚哉訳、『トリポッド 1 襲来』、ハヤカワ文庫SF、2004年を読む。
本書は、突然降ってきた三本足鋼鉄の侵略者・トリポッドから逃げる少年たちの物語。 最初にやってきたトリポッドは、あっけなく破壊された。 しかし、2回目の侵略は、精神を支配する巧妙で徹底したものだった。 トリポッドは、帽子のようなもので人間を支配していってしまう。 偶然最初の侵略に立ち会った主人公たちは、自由を求めてトリポッドから逃げることになる。 その顛末を描いたのが本書だ。
本の裏の紹介を読んで、どこかで読んだことがあるような気がする設定だったが、訳者あとがきを読んで納得。 これは1970年代の終わりに学研から出ていた〈三本足〉シリーズだったのだ。 〈三本足〉シリーズは、『鋼鉄の巨人』『銀河系の征服者』『もえる黄金都市』の全3巻。 今回出た本書は、この後に書かれたシリーズの一番最初のお話。 以降の巻も、新訳でこれから2ヶ月に1冊ずつ出るらしい。
2005年の1月に出る予定の『脱出(旧・鋼鉄の巨人)』を、昔、子どもの頃に読んだときには、結構、嫌な気分になったのを覚えている。 というのも、いきなり、大人はみんなアヤシげな機械でマインド・コントロールされている世界という、かなりイヤな話だったからだ。 しかも、主人公の少年は、近々、そのマインド・コントロールな装置をかぶせられることになっているという。
まるで、職場の研修で自己啓発セミナーを受講させられる中小企業の社員のような立場だ。 行ってきた連中は人が変わったように、セミナーはよかったとか、謎のセミナー用語で会話しているんですが・・・、どうにも彼らの姿には拭えない違和感が・・・、自分もああなったら嫌だな・・・という状態。 ちなみに、本書とは関係ないが、研修の受講に関してはこんな話も。
憲法19条の思想・信条の自由により「研修が公務員個人の内心の自由に踏み込み、著しい精神的苦痛を与えれば、違憲・違法の問題を生じる可能性がある」(東京地裁 平成16年(行ク)第202号 執行停止申立事件(本案 平成16年(行ウ)第307号))。
参考: asahi.comより「君が代不起立で研修は違憲」 教員139人が提訴
それはともかく、話をもどして。 SFと言えば、脳天気にヒーローが活躍して、というのを想像していた年頃だったので、この本には当時かなり参った。 ハリーの大活躍を期待して本を買ったのに、よりによって『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』だったという感じ。
しかし、もう今なら、こういうお話も楽しめる。 次巻に期待。
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