ロード・トゥ・セレファイス
伏見健二著、『ロード・トゥ・セレファイス』、メディアワークス、1999年を読む。
本書は、先日取り上げた、『ハスタール』、『セレファイス』のシリーズに属する作品。 これで、シリーズ作は全部読んだことになる。
この3作は、全部、雰囲気が微妙に異なっている。 クトゥルーもののホラーを一昔前のライトノベル調で書いた『セレファイス』、その続編でスペキュレーティヴな側面を強く打ち出した本書『ロード・トゥ・セレファイス』、妙に濃い目の設定と文体でハスター召喚を描いた『ハスタール』という感じになっている。
前作『セレファイス』で、主人公の2名、東宮騎八郎 -- ヨグ=ソトース、水沢祐紀 -- クトゥルーというつながりが明らかになった。 本作では、更にもう一人の主人公である桑原直樹がナイアーラトテップと共鳴する。 そして、日向敦子の真の姿が明らかになり、邪神の復活を夢見るものや、阻止するものたちの暗躍する舞台の上で、主人公3名がゲーテのファウストをなぞらえた物語を演じ、日常へ回帰するまでが描かれる。 そういう意味で、本書は、人間のレベルでのモラルや利害を巡る物語にとどまらず、それを越境してしまった価値観の領域にもほんの少しだけ踏み込んでいる。 そのちょっとした踏み外し加減がおもしろかった。
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