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2004.11.28

泣き虫弱虫諸葛孔明

酒見賢一著、『泣き虫弱虫諸葛孔明』、文藝春秋、2004年を読む。

酒見賢一と言えば、『陋巷に在り』という、一風変わった孔子と顔回の呪術的物語で有名。 本書は、その酒見賢一が書いた、ものすごーーーーーーく変わった三国志。

本書では、諸葛孔明は、一般人の理解を遥かに超えたイッちゃった人物として描かれる。

なんというか・・・。 セーシンセカイな催しに参加すると、中には、アジアというかパシフィックというか、そんな雰囲気のアヤシい服とアクセサリを身につけた、ナヨナヨしたエエ歳こいたオッちゃんやオバちゃんがいたりする。 それで、エナジーが波動がとか、○○センセのセミナーでチャクラが開いてとか、パラダイムシフトで百匹目のサルでDNAの目覚めな会話をしていたりする。

そんな雰囲気を、人類が決して到達できないレベルまで高めた漢、それが本書の諸葛孔明だ。

どこからどう見てもアヤシい服に身を包み、でかい扇子をパタパタ。 言ってることは、ほとんど理解不能で、スケールだけは宇宙規模なアナザーワールド。 そのくせ、稀に、意味不明で持って回り過ぎているけれど妙に的を射たアドバイスをくれたりと始末に負えない。 近隣住民の評判は最悪だ。

そんな珍獣を主人公に設定したものだから、ヨメの黄氏は醜女でマッドサイエンティストで常人の理解を超えた男性趣味の持ち主、劉備一味は血に飢えた頭の悪すぎる任侠組織で百戦百逃。 漢と漢の熱い勝負(議論)は、話の中身よりも、どっちが有無を言わせぬ非常識な迫力を演出できるかで決まる。

とにもかくにも、すごすぎる話。

本書は、「三國志」というディテールの足りなすぎる歴史書の行間や、「三国志演義」の巷の伝説を集大成しちゃったが故の不自然な記述を、どこまで崩した読み方が可能かに挑戦しているのだ。 こんなメチャクチャな話なのに、思わずキャラクターたちの迫力に負けて、「うん、こんな無茶な読み方も可能だよね。うん、うん」という気分になってしまう。

なお、本書で描かれるのは、贋作臥竜伝説、孔明の結婚、徐庶の不幸、三顧の礼の超真相。 続きが「別冊文藝春秋」で連載中なので、続編に期待。

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