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2004.12.28

エクセル・サーガ 13

六道神士著、『エクセル・サーガ (13)』、少年画報社 ヤングキングコミックス、2005年を読む。

『エクセル・サーガ』は、現代のおたく系マンガの自己パロディ的要素を強く持った作品だ。 そして、「悪の秘密組織」vs.「正義の秘密組織」という構図を持っている。

悪の秘密組織・理想推進機関アクロスは総帥イルパラッツォに率いられている。 この組織は、この総帥と、ほとんど役に立たない女幹部だけで構成されている。 一方、正義の秘密組織は、お役所の一部として、蒲腐(かばぷ)博士に率いられ、正義のヒーローっぽい装備を与えられている。

この作品は、ここに至るまで、ほとんど話は進展しなかった。 延々と、アクロスの女幹部で主人公のエクセルを主に中心として、登場人物たちの魅力をドライビング・フォースに物語が繰り返されてきた。 たとえば、エクセルを主人公とした回では、総帥イルパラッツォへの敬愛と、作戦の失敗、赤貧生活を、ドタバタのギャグ、しかもこのジャンルへのセルフ・パロディの順列組み合わせ再生産といった形式が取られてきた。

ときたま、善悪ともに、どう見てもダメダメなメンバーに見えるものの、実はほとんどすべての人物が何らかの必然性を持って集められたこと。 どちらの組織も、トップは非常に強力な切り札を隠し持っているらしいが、なんらかの事情で使えないこと。 それゆえ、確信犯的に、構成員に愚劣な作戦を遂行させていること、などなどが、断片的に語られてくるだけだった。

『エクセル・サーガ』は、壮大な背景がありながら(いや、実はないのかもしれないが)、ギャグに主眼を置いたため、背景のほんの一部だけを語るのにさえ、12巻も費やしてきたという、異様な作品なのだ。

ところが、本書に至って、ようやくというか、背後に隠された設定が本格的に語られ始めてきた。 超古代文明のオーバーテクノロジーを擁した組織同士の戦いであること。 片方の目的は、オーバーテクノロジーの消滅であること。

ところがだ。 それらの設定でさえも、実は組織のトップによる単なるでまかせに過ぎないのかもしれないと、示唆される。 つまり、更なる秘密が隠されている可能性があるのだと、読者をあいかわらず宙ぶらりんにした引きをやっている。

思わず、先日、久しぶりに42巻が出た『ガラスの仮面』を連想してしまった。 「果たして、マヤの紅天女の舞台は描かれる日は来るのか?」 それをパロディで戦隊ものとしてやっているのが、この作品なのでは? と楽しませてくれる。

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