しばらく続いていた頭痛に関して、MRIの検査を受ける。
この手の検査には、X線CT、MRI、PETなどがあるが、それぞれX線、変動磁場、放射性物質を使う。
今回は、変動磁場をかけ、核磁気共鳴を利用して、水素原子などの位置を画像化するMRIによって、検査してもらった。
場所は、昔、画像診断関係の共同プロジェクトなどでお世話になった医院。
MRIの原理は知っていても、自分が診断されるのは今回はじめて。
検査は、機械に入って20分間じっとしているだけ。
ちなみに、この機械だが、強力な変動磁場を発生させ、これで核磁気共鳴を起こすため、ガリゴリと「工事現場」にでもいるような非常に大きな音を出す。
20分程度、狭くて、暗い場所で、大きな音を聞くのに耐えられない人には、この検査は向かないのだ。
さすがに、最初、でかい騒音にびっくりし、閉口したが、疲れまくっていたので、しまいには眠りこんでしまった。
検査では、脳の形、血管、加齢変化の見える3種類の断層画像を撮影した。
この断層画像を合成すると3次元の画像が生成される。
それぞれ説明とともに写真と3Dのビューアーでよく見せてもらった。
幸い、形が歪んだり、血管が切れたり、動脈瘤があったり、変質していたりするということはなかった。
結論としては、過労や睡眠不足やストレスによる頭痛ということ。
原因が明確になっただけでも、随分安心できた。
今回、頭痛でナーバスになっていたのにはわけがある。
昔、わたしの知人で、レイキのマスターティーチャーの資格も持っているという、ちょっとアレな小学校教員で、ゲシュタルト・セラピストもたまにやる人がいた。
この知人は、いろいろな悩みを抱え、自分でも自分がよくわからなかったのだろう。
そして、精神世界やセラピーも根本的な回答にはならなかったのだろうと、わたしは思う。
知人は、人生のマスターっぽく、かっこいい自分を演出していた。
しかし、実際にはシャイで、いろいろな壁にぶつかり、更に家庭や女性の問題も起こしていたのだ。
よく、「本当の自分」「自分に正直に」なんて話が、精神世界や、エンカウンター・グループみたいな思想を持ったセラピーでは言われることがある。
これは、ある意味、世間の慣習や常識に縛られているだけの人たちにとっては、振り返ってみて、よく考えてみてもいいことかもしれない。
しかし、そんな言葉や概念を真面目に受け取り、過剰に踊らされることにより、自分も親しい人も傷つける結果を生む可能性がある。
これは、精神世界やセラピーに関わる場合、極めて真剣に判断し、注意する価値があることだと思う。
たとえば、夫が、「本当の自分に正直に」なった結果、自分の家族がどうしても気に入らなかったり、他の女性をとても好きだったとしたら、どうするのか。
それを表現し、行動せよというのが、この手のものの、一つの典型的な指針だが、その結果までは責任を持ってくれない。
結局、ツケを払うのは、その言葉に踊らされた本人なのである。
わたしは、セラピーに何年間か参加していたことがある。
そこでは不倫の問題や、家庭崩壊や、親密になった参加者同士の恋愛トラブルをいくつか見てきた。
そういう問題があったり、そういう素養を持っている人たちの割合が、参加者に多かったのか。
それとも、「本当の自分」に振り回されるような「教義」を持ったセラピーに参加した結果、そういう問題が噴出したのか。
それはわからない。
また、「本当の自分」教の人たちは、仮に不倫だろうと、家庭崩壊だろうと、それが「本当の自分」に従ったものであるなら、甘んじて受けると言うかもしれない。
なお、ここでは「本当の自分」などと書いているが、これは教義によっては「天命」「天の声」「神の計画」「救世主の言葉」「ヴァジラヤーナ」などと置き換えることもできる。
さて、わたしの知人のその後だが、あるとき、展覧会に出展する作品を、すごいハード・スケジュールで作成していた。
そして、相当に強い頭痛がしていたのに、本当の自分に従って創作を優先し、医者に行かなかった。
そのとき、知人は、実は、クモ膜下出血を起こしていたのだ。
しかし、そのことを知らないまま、遂には還らぬ人となってしまったのである。
癒し手(ヒーラー)?
よりよき人生のアドバイザー(セラピスト)?
なんなんだろう、それって。
こんな話があっていいものか。
わたしはそう思わずにはいられない。
今回は、そのときのことが思い出された。
自らへの反省ともしたい。
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