すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた
ジェイムズ・ティプトリーJr.著、浅倉久志訳、『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』、ハヤカワ文庫FT、2004年を読む。
これは、ジェイムズ・ティプトリーJr.の連作ファンタジー。 舞台は、キンタナ・ロー。 そこに住む異邦人の元実験心理学者が、訪れた旅人から不思議な話を聞かされるというストーリーだ。
大学受験のときに地理を選択したとは思えないていらくだけど、まず、「キンタナ・ロー」と言っても、南アメリカの地理に詳しくないわたしには、どこだかはっきりしなかった。 本書に地図は付いているが、拡大されすぎていて、海岸沿いで、向かいに島があるのがわかる程度。 サーチして、調べてみたところ、地図によるとメキシコの東端らしい(参考: Quintana Roo, México maps)。
この土地における、アメリカ、メキシコ、マヤのややこしい関係が、軋轢をもたらす。 そして、海に関係したものが媒介して、こちら側と向こう側がつながってしまう。
向こう側のものは、醜悪だったり、現代人的な意味を超越していたりするにもかかわらず、魅力的だ。 それに関わってしまったものは、もはやこちら側での生は、ないも同然となってしまったりする。
そんな魔の物語。 それが、本書『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』なのだ。
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