封印作品の謎
安藤健二著、『封印作品の謎』、太田出版、2004年を読む。
本書は、主に制作側で封印された作品を取材したルポルタージュ。 取り上げられている作品は、特撮テレビ番組の『ウルトラセブン』の「遊星より愛をこめて」と『怪奇大作戦』の「狂鬼人間」、映画『ノストラダムスの大予言』、コミック『ブラック・ジャック』の「植物人間」ほか何作品か、0-157予防ゲーム『水夏〜おー・157章〜』の前身(?)。
著者は、元産経新聞の埼玉県庁担当の記者で、現在はフリーライター。 記者だった頃、記事にしたO-157予防ゲームが問題になって埼玉県が監修を降りるという事件に関わる。 また、大学生の頃に、神戸児童連続殺傷事件の報道規制に対しておかしいというWebページをやっていたとのこと。
本書の特徴は、一言で言って、特撮などのサブカルチャーに偏っていること。 巻末には、戦後の主な封印作品というリストが載っているが、これも概ね同様の傾向がある。 そして、その多くが古い話だということ。
本書のつくりは、基本的に関係者に取材し、経緯をまとめ、インタビューなどを通じて「著者が読者に考えて欲しいと思う」問題を提起するというもの。 これは、報道としては、ベーシックな作りであり、努力も感じられる。 でも、こういうサブカルチャーのような濃いメディアを扱う方法として、適切かどうかはちょっと疑問。 なんとなく、報道番組を見ているみたいに、対象と著者との距離が遠く感じられ、全体に薄味な印象になってしまう。 取り上げられた作品も、封印された経緯が、なんとなく不注意に作ってしまったところを、その問題に敏感な人たちから抗議を受けて、腰砕けな対応になってしまったという雰囲気のものが多い。 なんとなく、ダウン系な読後感。
表現の妥当性を争ったとか、抗議自体がトンデモとか、そういう話がもしあれば、もっと読みたかった。
この著者の安藤健二氏(他にも「芝姫つばさ」名義)は、1997年に「まな」名義で神戸児童連続殺傷事件に関する「反動!」というページを開設、後に「あやしいわーるど」の名を冠したいくつかのサイトの管理人をしていたらしい。 その辺の歴史を本にして欲しいかも。
参考: あやしいわーるどグループ & 歴史編纂委員会による「あやしいわーるどの歴史」 http://f16.aaa.livedoor.jp/~stwalker/
まなさんによると、上記の「反動!」は、「まな」名義ではなかったそうです。 訂正させていただきます。
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コメント
さ、さすがにそれは売れないかと……
投稿: まな | 2005.01.20 11:53
わーい、著者のまなさんだ。こんにちは。
「名義」が違うところは、訂正しておきました。ありがとうございます。
参考: 放置新聞の1.20の記事 http://d.hatena.ne.jp/m4n4/20050120
上記のリンク先を読んで思ったのですが、なるほど、そういえば、特撮の話では、版権というのが、報道というか、情報の流通をコントロールしているじゃないかというのも、『封印作品の謎』で提起した問題の一つでしたね。それで、それがおかしいよねというのは、うなづけました。
ただ、ちょっと「「サブカルチャーのような濃いメディア」だからこそ、有効な方法だと思うのだけどなぁ。」の部分の「有効」というのが、いまいちよくわかりません。誰が何をするのに有効と言っているのでしょうか。
ところで、わたしは、まなさんによる「あやしいわーるど」の歴史の本があったら、読んでみたいです。「いつか書きたい」ということですので、首を長くして待ちたいです。がんばってください。
投稿: ちはや | 2005.01.20 23:35
はじめまして。
トラックバックつけさせていただきました。
すごい読書量ですねえ。
おもしろそうな書名がたくさんあるので,また寄らせていただきます。
よろしくお願いします。
投稿: ちょび | 2005.01.23 17:09
ちょびさんこんにちは。
こちらこそどうぞよろしく。記事の相互リンク用に、こちらからもトラックバックさせていただきます。
投稿: ちはや | 2005.01.24 17:19