マグダラのマリア -- エロスとアガペーの聖女
岡田温司著、『マグダラのマリア -- エロスとアガペーの聖女』、中公新書、2005年を読む。
本書は、絵画を中心に読み解いて、マグダラのマリア像の変遷を紹介した本。
そもそも、マグダラのマリアとは誰なのか。 本書の一番最初に紹介されているように、マグダラという土地の人マリアの名前が出てくるのは、イエスと一緒の旅、磔刑、埋葬、復活に関するところのみ。 しかも、その素性には「7つの悪霊を追い出してもらった女」以上の記述はない。 「売春婦」というイメージは、福音書の他の箇所に出てくる女の人に関する記述と、混じってしまったために発生したもの。 しかし、このようなミス・リーディングが、聖と性と俗、悔い改めといった実に豊穣な文化的展開を生み出すわけで、本書では、それらが次々と紹介されていく。
中には、マグダラのマリアを守護聖人にしていた「鞭打ち苦行会」の絵もある。 その会員の姿は、全身白装束で、目と背中にだけ穴が空いている。 それで、その背中は、自分で鞭打ったために、血まみれだ。 どこからどう見ても、あやしいこと、この上ない。 目の前に現れたら、走って逃げ出したくなるに違いない・・・。 しかし、これが、信仰の一形態であり、修行のつもりなのだから、あなどれない。
とにかく、一筋縄ではいかない、人の造り出した文化の不思議さを感じさせてくれる本だった。
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