古本屋の女房
田中栞著、『古本屋の女房』、平凡社、2004年を読む。
本書は、かつて横浜に店を開いていた黄麦堂の夫人の田中栞さんによる、古本屋の話。 なれそめからはじまって、古本屋の日常、セドリ(古本が揃うように他店で買って補充する)、子育て、古本買いの旅行、そしてインターネット書店への移行までを描く。
古本屋になった話よりもなによりも、著者が古本を買いまくる姿が圧倒的だ。 何軒も古本屋やブックオフなどの新古書店を巡って、ガンガン本を買い込む。 とにかく、親の仇のように買い込む。 本を買うのは、自分の店の品揃えを整える用と、自分自身用だが、何か深い業のようなものさえ感じられる。
わたしは、ある種、手に入りにくいジャンルの本を読むのを趣味にしてるので、かつては頻繁に古本屋に通っていた。 いや、そもそも、子どもの頃から、神田の古書街は憧れの土地で、上京することは、イコール、本を買いに行くことだった。
しかし、そんなわたしでも、古書市の初日の開始の時間に会場一番乗りを狙ったり、古書店に日参する、本当に紙魚(しみ)な人たちを見ると、「自分はまだまだだ」という思いがしてならなかった。 引っ越しの手伝いに行って、新居の部屋の収納スペースが既に本で埋まっている状態を目にして、茫然としたりした。
古書には呪いがかかっているとしか思えない。
しかし、そんな日々にも終わりは来る。 駆け抜けたあの日を綴った本書の、あまりに寂しいエンドには、本当にしみじみ。
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