サマー/タイム/トラベラー 1
新城カズマ著、『サマー/タイム/トラベラー (1)』、ハヤカワ文庫JA、2005年を読む。
本書は、ちょっと大人ぶった高校生の青春を描いた作品。 全2巻の予定ということで、本書はその1巻目。
ストーリーは、世間からすればちょっと頭がよくて、世間を斜に構えて見ていて、SFが好きな少年少女たちが、仲間の一人、悠有という少女がテレポーテーションの能力を持っているらしいと気づいたところからはじまる。 そして、いろいろな時間旅行もののSFを読んだり、テレポーテーションの実験をしたり、逆説的な議論を交わしたりしながら、夏の時間が過ぎていく。 悠有には、十数日ごとに、感じているリアルが変化しているらしい不思議な精神の病に冒された兄がいる。 どうやら、それに関係した何かが、テレポーテーションと絡み、「永遠に失われた夏の日」がもたらされそうな暗示が提示されたまま、物語は進行していく。
本書には、SF好きな人向けのタームがとにかくたくさん埋め込まれていたり、うらやましいくらいに楽しそうな友人たちとの交流が描かれる。 あまりに狙い過ぎているような気もして、微妙な気持ちになってしまうわたしには、この物語との出会いは遅すぎたのだろうか。
それはともかく、『雲のむこう、約束の場所』のように、「楽しかったあの夏の日」は、唐突に終焉を迎えそうなこの作品。 その向こう側には何が待っているのか。 「失われたあの日」が、心に響く人にはたまらない。
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