"悪"はなぜ悪か
長谷川啓三編集、「現代のエスプリ456 臨床の語用論II -- 徹底した相互作用という視点」、至文堂、2005年に所載の仁平義明、「"悪"はなぜ悪か -- 悪徳商法の語用論」を読む。
「現代のエスプリ」は毎号特集記事だけで構成されている心理学系の雑誌。 今回の号は、人と人との相互作用に着目した特集。
この中で、「"悪"はなぜ悪か」は、会員権のアポイントメント商法と新聞の勧誘を事例に、そのテクニックを分析している。 具体的には、小さな依頼を引き受けさせた後ででかい依頼をする「フット・イン・ザ・ドア」テクニック、残り時間が減ってくると魅力的に思えてくる「閉店時刻効果」、質問から入って会話を行いやすくさせるとともに情報を集めるテクニックなど。 そしてこれらは、普通の社会的な生活の中では妥当な反応を、うまく利用したりしていると分析している。
著者の結論は、悪徳商法は、虚偽によって金銭的な被害などを与えること、社会生活上ありがちな反応を悪用すること、更に他者や自分に対する信頼を奪うことなどによって、悪だというものだ。 この記事の書き方だと、より後ろの方の問題に焦点が当たっていて(というか、より後ろの方の問題が本質的なのだという雰囲気で)、それが気になった。 だまされるという問題では、多層的なレベルで問題が起こり、そしてそれぞれのレベルで問題なのだと思う。
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