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2005.07.13

ロズウェルなんか知らない

篠田節子著、『ロズウェルなんか知らない』、講談社、2005年を読む。

本書は、群馬県のどこかを想定していると思われる過疎の町・駒木野で、UFOによって、観光再生を狙う若者たちを描いた小説。 駒木野は、古くはスキー場として首都圏からの観光客で賑わっていた民宿の町。 しかし、近くに温泉地ができたり、交通の便が発達した結果、スキー客はよりよいスキー場へ直行してしまうようになり、閑古鳥が鳴いている。 流星群の観測ツアーをやっても、民宿が酷すぎて、客の評判が最悪という、目も当てられない状況。 怪我の功名みたいなふとしたことから、UFOや古代遺跡や不思議な風習や謎の施設で、観光客を誘致しようという気運が高まる。 インターネット、雑誌、テレビ、いっちゃってるミュージシャンなどが絡んで、たくさんの観光客がやってくるようになるが・・・というお話。

本書で繰り返し描かれるのは、自分の論理と他人の論理のすれ違いだ。 古い民宿のおやじたちは、昔ながらの、安かろう悪かろうなサービスが当然で、文句をつける客は論外だと考える。 単なる贋作なオカルト物件を、客は勝手に妄想して、すごい話に仕立てていく。 まじめな整体でさえ、神のお告げや奇蹟のオカルト治療にされてしまう。 行政は、ずっと何もしてこなかったくせに、保身的な妨害だけは一人前にする。 贋作する側は贋作する側で、とにかく客寄せに精一杯で、波及効果にまで思いを巡らすことはできない。 オカルト批判も、何でもいいからおもしろければの客も、みんな自分の論理で勝手に動く。 このような論理のすれ違いが、どんどんストーリーをドライブしていく。

真偽も正誤も過ぎ去った後の何かが、ここには書かれている。

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