「伝統」とは何か
大塚英志著、『「伝統」とは何か』、ちくま新書、2004年を読む。
本書は、主に柳田國男を中心とした民俗学に関するお話。 わたしたちが「日本の伝統」だと思っているものは、実際には明治から昭和にかけて作られたものがあり、それらがどういう時代背景のもとに作られてきたのかを論じている。
取り上げられている話題は、血筋と家と母性、妖怪や山人や怪談、日本人の起源や山村調査やナチズムとオカルトと沈んだ大陸など。 これらが、柳田國男の言説とおかれた境遇の変化、時代背景を辿りながら論じられていく。
そういえば、魔術や神秘主義思想は、太古から連綿と秘密に伝えられてきた叡智であると主張されるものだが、実際には近代になってからディテールや背景理論がその場で作り出されたりしている場合がある。 ルーツの話は、単にインスピレーションの元だったり、立派に見せるための宣伝文句だったり、願望や妄想だったりする。
一見美しく壮大な夢やロマンの背景には、どのような願望や必然性があるのか注意を払いたいもの。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント