森鴎外訳 即興詩人
青空文庫にハンス・クリスチャン・アンデルセン著、森鴎外訳、『即興詩人』が登場し、ネット上で全文が読めるようになった。
アンデルセンの『即興詩人』は、個人的に思い出深い作品だ。 最初に読んだのは、岩波文庫の大畑末吉訳だった。 これは、予備校の講習に行っていたときに、神田の文庫専門の古書店で入手したものだった。 森鴎外の翻訳を探していたのだが、見つからずに、原典から現代語に訳した大畑版を入手した。 そうして入手した『即興詩人』を、あるときは冷たい冬のまちを歩きながら、あるときは混雑した列車の中で読んだ。
そんな思い出深い作品ではあるのだが、『即興詩人』は、はっきり言って、超ご都合主義のロマンス小説だ。 冷静に読んだら、うーんとうなってしまう。 わたしの場合は、そういうお話を読みたいときに、ある種のオーラのようなものが介在し、偶然に美しい思い出になったのかもしれない。
ところで、『即興詩人』と言えば、今回、青空文庫に収録された森鴎外の翻訳が有名だ。 これは、翻訳というよりは、意訳、超訳に近いもので、流麗な擬古文調で書かれている。 その凄さが、ブラウザ上で簡単に堪能できるようになったのは、感慨深い。
もっとも、紙の本の同内容のものと読み比べてみたけれど、紙に印刷されているものの方が、同じ内容であっても読みやすかった。 あと、テキスト版をダウンロードして、VT100端末をエミュレートしたソフト上で、ページャーを使ってみると、意外と読みやすかったりした。
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