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2005.09.07

マジック・キングダムで落ちぶれて

コリイ・ドクトロウ著、川副智子訳、『マジック・キングダムで落ちぶれて』、ハヤカワ文庫SF、2005年を読む。

本書は、「不死」の実現した未来世界で、ディズニー・ランドのアトラクションの派閥争いを描いた作品。 この「不死」は、記憶のバックアップとクローンを利用したものだ。 本当は、何をもって同一人物とするのかという問題はあるけれど、この未来世界では、その部分を気にする人は見当たらなくなっている。 また、人は、常時、ネットに接続されていて、貨幣に相当するのは、他者からの評価を数値化した〈ウッフィー〉と呼ばれているもので、これはネット上でデータとして交換されている。

最近、サーチエンジンの検索結果の表示順位にページの被リンク数が関係したり、SNSの友だちリストなんかを見ていると、どうやって人々の気持ちを集められるかが、ある意味、これから勝負になってくるところもあると思う。 著者は、EFF(電子フロンティア財団)の仕事や、ブログの編集やライターなどをしている人で、〈ウッフィー〉のアイデアというのは、たぶんそういうところから来ているのではないかと思った。

ただ、この「不死」も〈ウッフィー〉も、現時点では、個人的にはあまりいい気持ちがしない。 というか、気持ち悪さを感じる人が多いのではないだろうか。 でも、時代の趨勢がそうなれば、案外当たり前になっちゃうかもねという、著者のメッセージがここには込められているような気がした。

主人公も、そんな時代に適応して、ディズニー・ランドのホーテンテッド・マンションで、アトラクションを担当して、人生を謳歌していた。 ところが、ほんの運命のいたずらから、この「不死」にも〈ウッフィー〉にも見放され、見捨てた道へと転がっていく。

わたしたちからみて、違和感を感じる世界。 そんな世界が当たり前だった主人公が、当たり前じゃない側から見た世界はどんな世界だったのか。 それを描いたのが本書である。

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