デカルトの密室
瀬名秀明著、『デカルトの密室』、新潮社、2005年を読む。
本書は、島田荘司責任編集、『21世紀本格』、カッパ・ノベルス、2001年に収録された殺人事件とチェスとロボットと知性の身体性や自由意志を題材にした「メンツェルのチェスプレイヤー」の続編。 本作では、「メンツェル」とは主要な登場人物が同じで、「メンツェル」で語られた事件がときたま引用されている。 「メンツェル」は読んでなくても、それなりに大丈夫だが、登場人物のレナが魅力的に描かれているので、気に入ったら読んでみるのもいいかも。
本作では、前作に引き続き、殺人事件とチェスとロボットがからみ、ロボットの知性に関する問題に迫っている。
ストーリーは、オーストラリアで開かれるチューリング・テストのコンテストに、ロボット工学者のユウスケがやってくる。 その会場で、フランシーヌ・オハラという名前の、天才だが、他人の心が理解できない美しい女性と20年ぶりに再会し、勝負することになる。 ところが、勝負の直後に、ユウスケは誘拐、監禁されてしまう。 そこへ、進化心理学者のレナと、ユウスケの作ったヒューマノイド・ケンイチがやってくる。 そして、ユウスケの救出の過程で、暴走したケンイチがフランシーヌを射殺してしまう。
一体、何が起こったのか? フランシーヌの真意は? フランシーヌ型のヒューマノイドを売り出す企業プロメテの狙いは? といった謎が、ロボットの知性、心、自由という問題に迫りつつ、最近の科学の成果を紹介しながら、解き明かされていくというお話。
本作では、ロボットの知性や心を扱っているが、これは人の知性や心の鏡像だ。 機械が考えることができるのかという問題は、翻って、人間はどのような機構で考えてるのか、考えるとは何かという問題でもある。 ヒューマノイドのケンイチくんを通して、人が見えてくる、そんな物語だった。
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