海の底
有川浩著、『海の底』、メディアワークス、2005年を読む。
本書は、先日紹介した『空の中』と同じシリーズだが、話は全く独立に読める小説。 お話は、米軍横須賀基地の一般開放の日に、巨大ザリガニの大群が、突如襲ってくる。 基地に来ていた少年少女たちは、自衛隊員とともに、自衛隊の潜水艦の中に閉じ込められてしまう。 彼らが救助されるまでの共同生活と巨大ザリガニと戦う警察の奮闘を描くというもの。
本書では、閉じ込められた少年少女たちの間で発生する人間関係のごたごたとそこからはじまる人間成長を緻密に描いている。 彼らは、近隣の住宅地の住人で、近所付き合いや学校における力学などから、いびつな人間関係を閉じ込められる前から形成していた。 それが、潜水艦に閉じ込められることで、逃げ場がなくなり、またそのような人間関係を形作る外因から遠ざかることで、自分たちの関係を振り返るきっかけが生まれる。
また一方で、警察の戦いのパートは、『パトレイバー』的な楽しみを感じさせてくれる娯楽作になっている。
楽しい読書体験だった。
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