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2005.11.10

<霊>の探求

津城寛文著、『<霊>の探求 -- 近代スピリチュアリズムと宗教学』、春秋社、2005年を読む。

本書は、スピリチュアリズムの根本にある<霊>について、宗教学的に論じた本。

そもそも、スピリチュアリティとは何か?  たとえば、このウェブログのテーマの一つはスピリチュアリティのつもりだが、それは個人的には「向こう側からやってくるもの」=「非日常性な何か」という意味で使っている。 具体的には、宗教、オカルト、精神世界、こころなどに関することだ。 これは、かなり広義な意味だ。 また、現在の世の中一般では、「なんとなく不思議な感じ」のするものという感じで使われていると思う。 しかし、そもそも「スピリット」=「魂」というわけで、本来的には魂性に関することがスピリチュアリティだ。 そして、その近代的な萌芽は、19世紀の心霊主義に遡る。

本書では、フォックス姉妹のポルターガイスト事件にはじまる19世紀の心霊主義の時代に議論されていた問題を整理し、特に霊に対するスタンスに焦点を当てて、宗教学的にスピリチュアリティを論じている。 古い話ではあるけれど、現実問題、当時議論されていたことは、現在にいたるまでほとんど進歩していないことがわかる。 霊現象とは何なのか、インチキなのか、精神の病なのか、霊がいるのか、生者の超常能力の発現なのか。 死後の世界はあるのかないのか、あったとして霊がわれわれにコンタクトをとろうとするのか。 などなど。 心霊主義と近くて遠いオカルティズムとの対比などから、霊の問題の全体像がだんだんと浮き彫りにされてくる。

19〜20世紀の心霊主義やオカルト、そして近年の臨死体験などに興味がある人にはおすすめ。 ただし、あくまで本書は学術書。

なお、本書は、宗教学っぽく、対象の抱える問題についてはスルーしていて、インチキの問題はほとんど触れられていない。 近代スピリチュアリズムのインチキ問題は、インチキの当事者だったM・ラマー・キーンの『サイキック・マフィア -- われわれ霊能者はいかにしてイカサマを行ない、大金を稼ぎ、客をレイプしていたか』(皆神龍太郎監修、村上和久訳、太田出版、2001年)が非常に参考になる。

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