雲のむこう、約束の場所
新海誠原作、加納新太著、『雲のむこう、約束の場所』、エンターブレイン、2006年を読む。
本書は、新海誠が監督をつとめたアニメ映画「雲のむこう、約束の場所」のノヴェライズ。 原作にディテールが付加されて、だいぶ長めの作品になっている。 なお、本文は濃い青いインクで印刷されている。
「雲のむこう、約束の場所」というと、思い出されるのは、新海誠が好んでいるという村上春樹、そして冒頭でサユリが「永訣の朝」を朗読する宮澤賢治だ。 本書は、村上春樹っぽさはないが、宮澤賢治は要所で引用されていて、いい感じをかもしだしている。
なお、本書では、国語の教員が宮澤賢治ファンで、趣味に走った授業を展開しているという設定になっている。 そういえば、高校のときの国語の教科書には「永訣の朝」が載っていた。 しかし、考えてみれば「雲のむこう、約束の場所」では中学生がこれを朗読しているわけで、そういう意味では、背伸びした授業だったということかもしれない。
それから、本書で書き加えられたディテールは、浩紀と拓也と佐由理のなれそめや、バイトをすることになった経緯や、ジェットエンジン入手の経緯、etc.といったもので、物語に深みを与えてくれる。
一部、矛盾した記述もないわけでもないけれど、ていねいに書かれた作品だった。
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