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2006.01.14

「カルト」を問い直す

櫻井義秀著、『「カルト」を問い直す -- 信教の自由というリスク』、中公新書ラクレ、2006年を読む。

本書は、宗教社会学者が、カルト問題を論じた本で、これを読むとカルト問題のホットな話題が一通りわかる。

従来、宗教学者は、宗教に寛容で「カルト」的な宗教団体にさえ共感してみせたり、あるいは関わらないで無難な宗教団体を調査対象に選んできたように思える。 そういう意味で、本書は、実に真摯に「カルト」の問題を現実的に論じており、著者の誠実さが感じられる。

本書では、信教の自由という憲法にもうたわれた原則があり、その中で生きるわたしたちが、現実にどんなリスクをしょっているのかということに焦点があてられている。 原理や原則や理想で論じることなく、統一協会、オウムなどの周辺で近年起こっている問題を、一つ一つ具体的に、それぞれの立場を現実に足をつけて論じている。

個人的には、どういうときに教団が世間と対立し、「カルト」化するのかという分析が興味深かった。 宗教教団とて、資金や労働力は必要であり、それをどうやって確保するかがポイントになる。 経済構造や支持者の変動を見ると、どのくらい教団のメンバーから金銭や労働力を提供される必要があるかが見えてくる。 ここが破綻してしまうと、メンバーは搾取されることになり、そのために無理も行われ、カルト化する危険性があるというものだ。

本書とは直接の関係はないが、人の流れや金の流れは、議論の多い団体の問題においては、非常にポイントだ。 たとえば自己啓発セミナーでは、短期間に大きな効果が得られるという建前のため、受講者は常に入れ替わるのが前提のプログラムと理論になっている。 このため、常に新規の受講者を集める必要がでてきてしまい、参加者に勧誘活動をさせたり、受講料が高めになるなどの無理が発生し、批判されてきた。

この他にも、本書には、非常に多岐に渡る議論が整理されており、大変な労作だと思う。

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