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2006.03.06

脱線好きな人のための理論物理のはなし

高橋康著、『脱線好きな人のための理論物理のはなし』、日本評論社、2006年を読む。

本書は、解析力学や場の理論という、まじめに物理をやる人にとっては大事な枠組の中の、基本的なのだがなかなかわかりにくいところを、わかりやすく書いた教科書を書いているということで、物理学を学んだ人には有名な高橋康の最新刊。 もっとも、場の理論を学んだ人にとっては、どちらかというと、ウォード・高橋の恒等式の高橋康として印象深い人であろう。

本書は、もう随分いい年になられた高橋康が、自分の若い頃の話を交えながら、場の理論(の発展)について書いたエッセイである。 意外と、教科書を読んでいると、本当に肝心なところがサクッと書かれていて、その意味や重要さに気づかないことがある。 そういうところを、含蓄深く語ってくれる本があると、見落としていたところに気づいたり、視点が変わって理解が深まったりするものだ。 本書もそういう意味で、場の理論の理解があやふやな人には、結構、意味のある本だと思う。 ただし、系統的な話でもないし、書いてあることの範囲は非常に狭いので、普通に場の理論を学びたい人には全くすすめない。 ちょっと、視点を変えてみたいと思っていて、若き高橋康の肖像を描いたエッセイを読んでみたいのであれば、ぴったりの本だ。

読んでいて気になったのは、いくつかの現在では当たり前に使われている物理的な手法に対する著者の抱いている違和感だ。 わたしは、朝永振一郎の弟子で、大変年をとられた先生に、まさにこの本に書かれている分野を習ったことがある。 その先生も、同様に、近年の物理的な手法に疑問を呈しておられた。 年を取られた方々が、新しい手法に違和感を抱くことは、時代の常なのかもしれない。 後進の人々は、それまでの物理学的なセンスでは、違和感を抱くような概念に慣れ親しめたからこそ、それが主流になった世界で活躍できたはずだ。 そうでなければ、その分野では、頭角を著せなかったか、新しい方法を提示しただろう。 研究には、時流があり、そのトレンドにセンスがあうかあわないかというのは、職を得るのが困難な研究者にとっては、結構、重要なファクターだったりする。

久しぶりに場の理論の話を読んで、楽しかった。

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