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2006.05.31

美術はがきギャラリー 京都 便利堂

博物館や美術館のグッズを制作している京都の便利堂のお店「美術はがきギャラリー 京都 便利堂」が3月末に神田にできた。 岩波書店の本屋さんである岩波書店アネックスの2Fの一角で営業している。

主には、博物館や美術館の所蔵物のはがきやクリアファイルを販売しているのだが、変わったグッズも販売されている。 たとえば、「鳥獣戯画」の巻物、ストラップ、汲み出し、小皿などのグッズ。 巻物に関しては、原寸大のものと、縮小版があり、コロタイプ印刷された墨の刷り上がりは非常に美しい。 ちなみに、コロタイプ印刷というのは、ガラスの版を使った版画だ。

これらは、京の逸品老舗モール 京都 便利堂のサイトでオンラインでも購入できるが、やはり美術品関係のグッズは実物を実際に目で見て確認したくなるわけで、こうして手に取れるように置いてあるショップはうれしい。

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2006.05.30

ダ・ヴィンチ・コード展

六本木ヒルズ森タワーで開催されている「ダ・ヴィンチ・コード展」を見に行く。

この展覧会、入場料は一般が1,500円だが、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の実物は1点もない。 あえて実物と言えるのは、映画の撮影に使われた小道具の一部くらいだ。

では、残りは何なのかというと、その多くは液晶テレビやプロジェクターで映しだされたデジタル映像なのだ。 映画の「ダ・ヴィンチ・コード」はソニー・ピクチャーズの配給だが、この展覧会にもソニーは関係していて、出口付近ではBRAVIAの展示も行われていた。

デジタル・ミュージアムとか言って、単にテレビを並べて絵画を映されてもはっきり言って困るのだが、ほとんどの展示は2枚の画面を使い、絵画とその動画解説という感じで構成され、デジタルのよさも感じられる展示だった。 巨大な壁画である「最後の晩餐」も、プロジェクターで原寸大に投影され、その迫力がよくわかるものだった。

出口の外では、ダ・ヴィンチの絵の複製画が何種類も販売されていた。 一瞬、スケッチ風の絵が欲しくなったが、思いとどまった。

あ、そうそう、パリの国立図書館に所蔵されている「秘密文書」のコピーも展示されていた。 この文書って、見るからに微妙な代物という感じだった。

参考: 皆神龍太郎著、『ダ・ヴィンチ・コード最終解読』、文芸社、2006年

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2006.05.29

グロービートジャパンのラーメン花月サイトのリニューアル記事

WEB CREATORS LAB.著、『プロセスオブウェブデザイン』、翔泳社、2006年という本が出たが、グロービートジャパンのラーメン花月のショップリストのサイトをライトウェイトなCMS(=ブログシステム)を使ってリニューアルしたという実例が紹介されている。

この「方向性」のところに「ブログシステムにより更新を担当者レベルで可能にすることと、テキスト情報を増やしてのSEO対策、将来の展開を見据えた構成へと変更すること」と書かれており、非常に興味深い。 サイトリニューアル後には、訪問者数が1.6倍くらいに上昇しているように見えるグラフも掲載されている。

あと、依頼者と制作者の氏名と所属まで紹介されており、いろいろな意味で興味深い資料になっている。 この記事を書いたのも、制作者の一人で、karadesign代表の原一浩氏ということ。 「ブログとFlashを活用したキャンペーンソリューションのご案内」という提案書の表紙には、森英信氏の名前が書かれている。

参考: はてな - グロービートジャパン、弁護士山口貴士大いに語る: グロービートジャパン(らあめん花月)・日本平和神軍事件の公判のご案内、悪徳商法?マニアックス 悪の最新情報: グロービートジャパンのSPAM大作戦

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2006.05.28

自己啓発セミナーの語られ方

「自己啓発セミナーの語られ方」という文章がブログで公開されている。

どうも社会学系の修論らしい。

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2006.05.27

IO-DATA GV-1394TV/M2に関するメモ

I-O DATAのMacintoshで使えるFireWire接続なDVエンコーダ付きのTVチューナー GV-1394TV/M2に関するメモメモ。

付属ソフトはバージョンアップ版がある。 付属ソフトをインストールすると、/Apllications/GV1394TV/以下以外に、/Library/StartupItems/WakeUpDaemon/にインストールが行われ、/Library/Preferences/loginwindow.plistにも記述が追加される。 これらの記述を変更しないと、毎回起動時にChannel Managerが自動起動する。

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2006.05.26

刑務所の中

花輪和一著、『刑務所の中』、講談社漫画文庫、2006年を読む。

本書は、拳銃の不法所持で3年の獄中生活を送った花輪和一が、刑務所での生活を描き、人気を博した作品を、文庫化したもの。 ただし、21ページ近くの書き下ろしがある。

読んでみて、懲役刑のイメージがはじめて見えてきた。 いずれにせよ、刑務所の中は、時間の流れが違う。 生活も、どこか昭和な雰囲気で、これは施設の古びた感じや、作業内容、たくさんの人とプライバシーがほとんどない同居状態ということから来るような印象を受けた。 関心事は、食事がメインになるのか、頻発する食事のメニューの話にはむむむという感じ。 後、入浴があまりにせわしないのも印象的だ。 かなり想像と異なっていたのは、懲罰の対象となる行為だ。 どちらかというと、決められたことを忘れずに、厳密に実行できるかが問われているような気がする内容で、ちょっとぼけている人にはつらいところかもと思った。

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2006.05.25

自己啓発セミナーのプログラムを創った男

多くの自己啓発セミナーのプログラムは、そのセミナー代表者が「おれが作った」とか言っていても、実際には昔のライフスプリングのものに似ていることがよくある。

昔のライフスプリングのプログラムは、Basic、Advance、Leadership Programの3段階でできていた。 これらのプログラムは、それ以前にマインド・ダイナミックスとリーダーシップ・ダイナミックス・インスティチュートで行われていたセミナーの蓄積に、ゲシュタルト研究所に所属していたジョン・バルク・エンライト(John Burke Enright, Ph.D)がデザインに協力して作られたものだと言われている。

ジョン・エンライトの単著で日本語のものは、少なくとも国会図書館にも所蔵されていない。 エンライトの日本語の本は、はる研究院の大和信春が代表者をしていたJESP(John Enright Support Project)本部が発行した『地球の未来を開く鍵』(1996年)という小冊子が存在している程度だ。 この小冊子は、エンライトの講演をまとめたものらしく、内容は一言で言えば、「地球環境が破壊されており、今、わたしたちの心が変わらなければならない」というものだ。

この著書などをもとに経歴をまとめると、こうなる。

  • 1927年 ワシントン州の田舎に生まれる(1929年との資料もあり)。
  • 1949年 イェール大学で文学士を取得。
  • 1959年 カリフォルニア大学バークレー校でPh.Dを取得。
  • 1964年 APA(?)から「上級臨床心理学」取得
  • 1965年 カリフォルニア州のセラピストの資格取得
  • 1966年 カリフォルニア大学(?)やジョン・F・ケネディ大学(?)などで教員
  • ゲシュタルト・セラピーの創始者フリッツ・パールズから学ぶ。 エリック・バーンとも関係があったという話もあるが、未確認。 ゲシュタルト・インスティチュートなどに所属。
  • 1973年 自己啓発セミナーなどのプログラムの開発に協力し、ライフスプリング、ライフダイナミックス、Be Youなどに関わる。 その他にはゼネラルモーターズ、ウィルソン・ラーニング、カナダ政府、エサレンなどにも関わったと言われている。 ちなみに、ARCインターナショナルのARCはAwareness、Responsibility、Communicationの略だが、これを考案したのはエンライトであると、ロバート・ホワイトの"Living An Extraordinary Life(驚異的な人生を送る)"(ARCワールドワイド、2000年)には書かれている。
  • 1988年 地球環境保護運動にコミットする。
  • 1994年 日本人の響子さんとご結婚。
  • 2004年 死去(筋硬化症?)

30代後半でセラピストになり、40代くらいでヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントに突入し、40代なかばから自己啓発セミナー関係者、60代から地球環境保護運動に人生をかけ、60代後半でご結婚。 歳を重ねて、ますますという感じでしょうか。 1996年に出た小冊子も、セミナーっぽいだけでなく、なかなか強烈な内容になっている。

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2006.05.24

青いうた

斉藤ひろし著、『青いうた -- のど自慢 青春編』、キネマ旬報社、2006年を読む。

本書は、青森と東京を舞台に、非常に泥臭く青春を描いた同名の映画のノヴェライズ。 映画の方を見に行く時間が取れないので、先にこちらを読んでみた。

お話は、むつ市で、いつの間にか不良ということになってしまった達也、知的障害を持った弟の良太、達也に思いをよせる恵梨香、陸上部の後輩で医者になることを決められている俊介の青春を描く。 達也は、故郷でうまく行かなくなり、東京でビッグになってやろうと上京するが、どんどんだめになっていく。 決してうまく行っていたわけではないが、それでもそれぞれを大切に思い、大事にしていた4人の関係も、美しい思い出を裏切って、汚れていく。 そんなとき、良太の好きな「のど自慢大会」が、故郷で開催されて・・・というもの。

ある意味、非常にベタでヒューマンなストーリー。 平成の時代に「東京でビッグになる」のような夢はなかなか持てないだろうし、「のど自慢」に大きな意味を見いだすのも難しいと思う。 失われた昭和の幻像のようなものを描いた『雲のむこう、約束の場所』などでも青森を舞台にしていたが、そういう意味で、本州の北端には「失われてしまった何か」が感じられるのかもしれない。 実際に、むつ市でロケをしたというこの作品、どのくらい風景がマッチしているのか興味深い。

ちなみに、この作品は『雲のむこう、約束の場所』とは対照的に、登場人物は方言でしゃべるようだ。

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2006.05.23

数式を使わないデータマイニング

岡嶋裕史著、『数式を使わないデータマイニング入門 -- 隠れた法則を発見する』、光文社新書、2006年を読む。

本書は、データマイニングの概念を非常に簡単に紹介したもの。 本書で取り上げているのは、データマイニングとは何か、そのために集めるべき/集められる情報、得られる知見、回帰分析、決定木、クラスタ分析、自己組織化マップ、連関規則(因果関係の分析)、ニューラルネット、個人情報などの収集と管理の問題、Web2.0時代の監視問題など。 挙げられている例も具体的でわかりやすい。

本書の特徴は、データマイニングをするときに、どういうことがうまくいかないのかという、限界も紹介しているところだ。 入門書というのは「これを使うとこんなにうまくいく」という紹介になりがちだが、本書では本質的なアイデアを紹介し、その限界をわかりやすく提示している。

なお、紹介されている内容は、本質的で原理的で初歩的なものだ。 これを読んだからと言って、データマイニングのツールが使えたり、できるようになるわけではない。 ただし、高度なツールや情報社会の背後で動いている原理は、なんとなく見えてくるかもしれない。

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2006.05.22

ハリー・ポッターと謎のプリンス 下

J.K.ローリング著、松岡佑子訳、『ハリー・ポッターと謎のプリンス(下)』、静山社、2006年を読む。

下巻を読み終わった。 息をつかせない場面の連続で、さくさくと読み進めることができた。 過剰なギミックも減り、なんというか、普通のファンタジー小説している。 謎のプリンスの正体も悲しい別れも納得の展開。

そして、どうやらテーマは、魔法使いと一般人の間の血というか人種問題にあるらしいという予感を告げ、敵の親玉との戦いが待つ最終巻へと流れ込んでいる。

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2006.05.21

ハリー・ポッターと謎のプリンス 上

J.K.ローリング著、松岡佑子訳、『ハリー・ポッターと謎のプリンス(上)』、静山社、2006年を読む。

発売日にゲットしたものの、やっと読みはじめる余裕ができた。 うーん、強烈な1週間だった。

それはともかく。 ハリー・ポッターは全7巻ということで、この前の5巻があまりに暗いというか救いがないお話だったから、この6巻はいかに転換できるかがポイントだった。

少なくとも上巻は、5巻とはうってかわって、随分素直なファンタジーものになっていて、かなり読みやすい。 迫る危機、敵の親玉の過去の真相といった感じで、どんどん盛り上がる。 また、最初の頃は単なるいじめによるいざこざが多かったのだけれど、6巻では、男の子と女の子が互いに意識してぎすぎすするという方向にシフトしていて、ほほえましい。 巻がすすむとどんどん厚くなるので、最後はどうなるのかと思ったけれど、一応、厚さの増加はおさまったっぽい。

後は、下巻で待ち構える謎のプリンスの正体と悲しい別れとは何かというところか。 とりあえず、わくわく。

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2006.05.20

狂気の偽装

岩波明著、『狂気の偽装 -- 精神科医の臨床報告』、新潮社、2006年を読む。

本書は、近年、フィーチャーされている「心の病」の実態を、事例などを交えながら紹介している。 タイトルの『狂気の偽装』や帯の「マスコミが煽り、社会に蔓延する「精神病」の虚妄を衝く」「その「心の病」は大ウソだ!」などは、非常に扇情的で目を魅くが、本書の内容とはずれている。 本書は、流行に乗ったインチキな心の病を告発するというよりは、実際の心の病の実態を描写する方に力点がおかれている。

本書で紹介されているのは、PTSD、トラウマ、うつ病、行為障害、アスペルガー、ADHD、自閉症、境界例、自殺や自傷、脳障害、統合失調症、摂食障害などなど、多岐に渡る。 あまりに深刻であまりに救いがない。 これからメンヘル系の語りを顧みてみると、それは症状というよりは、むしろメンヘルな症状を語らずにはいられない何かの方こそが深刻なのかもしれないと感じた。

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2006.05.19

化生曼陀羅

ささやななえこ著、『化生曼陀羅』、ハヤカワコミック文庫、2006年を読む。

本書は、児童虐待を描いた『凍りついた瞳』で有名なささえななえこが、1980年代前半に描いた怪奇漫画。 オシラという神秘的な力を持った美青年が登場する作品を3つ収録している。 ただし、オシラと言っても、あまり実際のオシラさまとは関係がない。

お話は、荒々しい神の力を手に入れようとするものや、過去の餓鬼の因縁や、秘宝を入手しようとするものなど。 いずれにせよ、あまり幸せな話ではない。

読んでいると、レトロな感じがする怪奇漫画だった。

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2006.05.18

自己啓発セミナーを考えるシンポジウム

今月の27、28日に武蔵野大学で、第53回日本グループ・ダイナミックス学会が開催される。 公開の大会シンポジウムは、「グループ・ワーク その光と陰 -- 自己啓発セミナーを考える」(内容紹介のPDF)だ。 28日の午後1時から3時半までの2時間半と時間もたっぷり。

グループ・ワークと自己啓発セミナーは似ているわけだが、意外と正面きって議論されることは少ないので、興味深いかも。 だいたい、実際問題、構成的グループ・エンカウンターの様子を写した写真を見ても、ほとんど自己啓発セミナーと区別がつかなかったりするし。

しかし、なんと言ったらいいだろう。 グループ・ワークというものに、「いいもの」を感じる一方で、どうしても疑問も感じずにはいられない。 敢えて、その疑問だけを書いてみるとこんな感じ。

グループ・ワークというのは、人間的成長を謳っていることが多い。 人間的成長とまではいかなくても、対人関係のスキルの向上とか、対人関係の問題の解決とか、オープンになるとか、自分自身に気づくとか、少なくともそのくらいの効果はふつう主張されている。

ところが、そのグループ・ワークを行っている人たちは、本人たちはすばらしいことをしていると思っているかもしれないが、周囲からは必ずしもそう思われているとは限らない。

これまた、敢えて問題になる場合だけ書いてみると、こんな感じ。 指導者がグル化している、参加者が指導者を崇拝している、排他的だ、○○のグループとは仲が悪い、参加者の家庭問題が悪化している、グループの中で恋愛関係の問題が多い、なんでもかんでも親子関係だ、PTSDだ、アダルトチルドレンだ、ADHDだ、アスペルガーだ、解離だ、人格障害だ、などなど。 場合によっては、既存の社会に異議をとなえるのにとどまらず、違法行為にまで発展してしまい、子どもの教育とか世話までめちゃくちゃになったりすることもある。 こういうのは、コミューンを作っちゃって、外部との壁ができると加速されるかも。

ところが、そういう場合にも、信者さん曰く「先生のセラピーは本物で、深く、受容にとんだ人物です」。 そう、確かに、セラピーのセッションの間は、一流のパフォーマー。 しかし、外部から、その団体の運営や行動、意志決定の方法はどうなのかと考えると、首をかしげてしまうこともあるというわけ。

これらは、本当に人間的に成長したり、対人関係のスキルが向上したり、問題が解決したり、自分に深く気づくのであれば、起こらなくてもいいはずの問題だ。 とすると、謳われている効用というのは、一体何なの?ということにならないだろうか。

しかし、だからと言って、人間関係に関するなにがしかの効用がないのかと言うと、少なくとも主観的には人間関係に何かしらの効用があるような気がする。 どこまでが錯覚なのか。 非常に悩ましい。

岡田斗司夫のプチクリ日記に「デスノート最終回・鎮魂歌」というエントリーがアップされているが、そこには、次のような箇所がある。

「デスノート」のテーマはただひとつ。

「絶対的な権力は、絶対的に腐敗する」という、ただそれだけのことを描き切った作品なのだ。

「永遠」や「絶対」を見つけちゃったと錯覚するとうまくいかないものなのかもしれない。

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2006.05.17

ダ・ヴィンチ・コード最終解読

皆神龍太郎著、『ダ・ヴィンチ・コード最終解読』、文芸社、2006年を読む。

本書は、宗教関係者以外による『ダ・ヴィンチ・コード』のコアな部分に関わる真相を紹介したもの。

5/20に映画が公開される『ダ・ヴィンチ・コード』と言えば、アイデアはトンデモ本『レンヌ=ル=シャトーの謎 -- イエスの血脈と聖杯伝説』などに基づいているのに、作者が「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、すべて事実に基づいている」とか書いたり、実在の団体を描いたりするもんだから、キリスト教関係者から糾弾する本が出されたり、批判されたりしている。 しかし、ニューエイジ批判などにしばしば見られるように、信仰のない人には関係ないこともいっぱい書いてありそうで、わたしはどうも敬遠してしまう。 そういう意味では、本書は、信仰のあるないに関わらず、楽しめるのでよかった。

本書で取り上げられている話題は、「最後の晩餐」に暗号は本当に隠されているか?、シオン修道会の情けない正体、レンヌ=ル=シャトーの謎の真相、ダ・ヴィンチ・コードの伝説の作られ方など。 巻末には竹下節子との対談もおさめられている。 これらは、『ダ・ヴィンチ・コード』本編を読んでおかないと、十分楽しめないので、本編を先に読むことをおすすめする。

本書で特に印象に残ったのは、シオン修道会のあまりにダメダメな実態だ。 情けないと言えば、『ダ・ヴィンチ・コード』本編のダイイング・メッセージと秘密儀式の様子は、第三者が見たら相当に情けないはずだ。 映画では、この辺、どのくらい情けなく表現されているのか興味深い。 いや、きっと神秘的に撮られてしまっているのだろうけれども。

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2006.05.16

アレクサンダー・エベレットのまとめ

5/6のロバート・ホワイトの講演会などに関連して、自己啓発セミナー対策ガイドのフリートーク掲示板で、アレクサンダー・エベレットが2005年に亡くなったという話を読んだ。

アレクサンダー・エベレット(Alexander Everett)は、精神世界系のおっさんで、元教育関係者。 この人物のはじめたマインド・ダイナミックスが、現在の自己啓発セミナーのルーツの一つになっている。 久保博司の『人は、変われる。 -- 内側から見た自己開発セミナー』によれば、晩年には、サイババにもかぶれていて、日本で1991年にセミナーをしたときには、その話をしていたという。

参考: 自己啓発セミナーに関する情報 マインド・ダイナミックス -- アレクサンダー・エヴェレット(以下で別な情報と書いているのはこれを指す)

というわけで、アレクサンダー・エベレットの話を調べてみた結果をまとめてみる。

調べてみたところ、http://www.alexandereverett.com/という、エベレットの教材の通販サイトを発見。 このサイトの情報をはじめとして、さまざまな情報を総合すると、以下のようになる。

  • 1921年ころ: イギリスに生まれる
  • 1950年: サセックスのベックスヒル・オン・シーにペンドラゴン校を設立
    ただし、調べてみたが、ペンドラゴンという学校はベックスヒル・オン・シーには発見できず。
  • 1953年: オックスフォードのヘンリー・オン・テムズに全寮制のシップレイク・カレッジを設立
    こちらは、公式ページがある。寄宿舎にはエベレット・ハウスというのもあるようだ。大学のニュースにも「創設者を偲ぶ」という追悼の記事があり、それによると2005年のはじめに亡くなったようだ。
    この記事もなかなか強烈。 エベレットのすごいところも書いてあるんだけど、「現実家でなく、日常業務では役立にたたない人だった。教員、夫、人としては、どうかという感じで、情熱や独創的なセンスはあっても、本学における短い在職期間の間にも、しばしばものごとを継続するということができなかった。」とか書いてあるよ…。
  • 1962年: 蒸気船S.S.フランス号でニューヨークに上陸し、ミズーリに行く
    別の情報によれば、キリスト教ユニティ派の牧師になりたかったらしい
  • テキサスのフォートワース郡全日制学校の設立を手伝い、教頭になる
    フォートワース郡全日制学校のサイトによると設立は1963年らしい。エベレットの名前は、このサイトにはない。
  • テキサス・クリスチャン・ユニバーシティで哲学と宗教を学ぶ。
    シルバ・マインド・コントロールのセミナーに出たのもこの頃か?
  • 1968年: アメリカ市民権を獲得
  • 1969年: マインド・ダイナミックス設立(別な情報では1968年)
  • 1970年代前期: マインド・ダイナミックスが海外にひろまる
  • 1974年: ロシアとインドに旅行し、東洋の哲学と宗教を学び、体験する
  • 帰国後、サクセス・ダイナミックスをはじめる
  • 1977年: インワード・バウンドをはじめる
  • 1989年: オーカス島での「愛と人生と光」のセミナーに16カ国から参加者を集める
  • 1991年: 日本でインワード・バウンドのセミナーをARC関係者の招聘により開催。サイババの話をする。
  • 2001年: http://www.alexandereverett.com/を公開。このとき80才
  • 2005年: 亡くなったのは、年のはじめ頃らしい。84才前後

ちなみに、このエベレットの教材の販売サイトによるとインワード・バウンドは2日間で、個人の成長と真の才能を発見するためのものだそうだ。 教材の方は、3つで129ドルで「スーツを新調するよりも安い金額で、アレクサンダーのスピリチュアル・テクノロジーを手に入れ、よりよい人生を」とかいう、売り文句で販売している…。 いまいち、スーツと比べる感覚が謎。 うーむ。

それから、エベレットの弟子として以下の名前が挙げられている。

  • グレッグ・ジョセフ: スピリチュアル・ヒーラーだとか。1970年代後期に学んだらしい。
  • ワーナー・エアハード: 1971年に自己啓発セミナーの元祖の一つのestを設立。後にフォーラムに発展。
  • ロバート・ホワイト: 1974年に自己啓発セミナーのもう一つの元祖であるライフスプリングを設立。共同設立者は、ランディ・レベル、シャーリーン・アフレモウ、ジョン・ハンレー。後に、ライフスプリングを去り、日本でライフダイナミックスを設立。
  • ランディ・レベル: ライフスプリングを去り、コンテクスト・トレーニングを設立。
  • シャーリーン・アフレモウ: ライフスプリングを去り、estのトレーナーになるが、もめて、ライフスプリングに戻った。
  • ハワード・ニース: スイスでパーソナル・ダイナミックスを設立。
  • ジム・クイン: ライフストリームを設立。
  • トーマス・ウィルハイト: PSIワールド・セミナーズを設立。
  • スチュワート・エメリー: estで働き、後にアクチュアライゼーションを設立。
  • ウィリアム・ペン・パトリック: 化粧品マルチのホリディ・マジックの社長。上級ディストリビューター向けの講座としてマインド・ダイナミックスを導入。しかし、商売や講座に批判が集まったり、飛行機事故で死亡したりして閉鎖。団体は復活し、現在、リーダーシップ・ダイナミックスを名乗る。
  • エド・ストラクチャ: 速読系?
  • ジョー・クレーン: 天使系?

初期には自己啓発系の人が、後期には精神世界系の人が多くなっているような。

ちなみに、ライフスプリングのプログラムを作ったゲシュタルト・セラピストのジョン・B・エンライト(フリッツ・パールズに学んだ)も2004年に亡くなっている。 自己啓発セミナーのWe Canに協力していたゲシュタルト・セラピストのポーラ・バトム(パールズの弟子)も2001年に亡くなったし、ぼちぼち、ヒューマン・ポテンシャル・ムーブメントや自己啓発セミナーの立役者たちが亡くなりはじめている。 直接本人から証言を取れる、そろそろ最後のチャンスといったところだろうか。

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2006.05.15

コスプレ幽霊紅蓮女

上甲宣之著、『コスプレ幽霊紅蓮女』、宝島社、2006年を読む。

本書は、2003年に「このミステリーがすごい」の第1回の『そのケータイはXXで』でデビューした著者の新作。 一応、シリーズ作でもある。 お話は、子どもたちにもまともに相手にされないネクラな小学校の女教師が、「紅蓮女」という都市伝説を、自分で創り、自分で「紅蓮女」の格好をして、夜な夜な出没し、街を恐怖に陥れる。 彼女は、「紅蓮女」になっているときだけ、自己実現できるのだ。 そして、「紅蓮女」としてのアイデンティティをかけた活動の過程で、口裂け女や呪われた村やストーカーや学校の怪談などの事件と遭遇し、乗り越えていく中で、自分自身として再生していくというもの。

この作品、こう言っては何だけど、非常にマンガ的なところがある。 設定の滅茶苦茶さというか、インパクトが何と言っても作品のキモだと思う。 主人公の必殺技など、コミックスの『無限の住人』の凛のものによく似ているくらいだ。 しかし、だからと言って、ライトノベルのように、割り切ってギャグをやっているわけでもないし、人物もよく描けているわけでもない。

そういう意味では、ターゲットと設定と書き方とテーマとパッケージングの組み合わせがよくないような。 なんとなく、もうちょっとおもしろくなりそうなところがもったないと思った。

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2006.05.14

神聖喜劇 第一巻

大西巨人、のぞゑのぶひさ、岩田和博著、『神聖喜劇 第一巻』、幻冬舎、2006年を読む。

本書は、大西巨人の『神聖喜劇』の漫画化作品。 第二巻も同時発売されている。 構成は全六巻の予定らしい。

お話は、超絶な記憶力を持った主人公・東堂が、大東亜戦争に徴兵される。 そして、軍隊での数々の理不尽に、一々ぶつかっていくというもの。

この主人公、ボルヘスの『伝奇集』所載の「記憶の人、フネス」やジーン・ウルフの〈新しい太陽の書〉のセヴェリアンまではいかないだろうが、とにかくいろいろな書物を正確に引用しまくることができる。

ロジカルに考える能力とカメラのような記憶力を持ったものにとって、この世はとにかく理不尽だ。 この作品では、特に理不尽さが明瞭に暴力を伴って現れる軍隊を描いている。 しかし、これはわたしたちの世界を極端に描き出しただけだ。 読めば読むほど、現実の自分を取り巻く世界に反響していく。

早速2巻も読むたくなった。

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2006.05.13

エンプティ・チェアの心理臨床

倉戸ヨシヤ編集、現代のエスプリ467「エンプティ・チェアの心理臨床」、至文堂、2006年を買う。

ずいぶん、久しぶりの更新になった今回。 この1ヶ月なんだったのというくらいの無茶なスケジュールだった。 こわれたPowerBookの代わりに購入したIntel入りのMacBook Proも、微妙に安定性に問題が(使いはじめにチリチリ音。フォントがおかしくなる。長時間使うと、アプリケーションがたまに落ちる、サスペンドからの復帰があやしい、ことえりが異常に重くなるなど)。 ココログもバージョンアップしてから、いろいろあるようだし。

それはともかく、ゲシュタルト療法の非常に代表的な手法の一つであるエンプティ・チェアを特集した雑誌が出た。 これは、ゲシュタルト療法の創始者フリッツ・パールズから教えを受けた倉戸ヨシヤ氏が編集したものだ。 セラピー以外にも教育などの分野での活用事例も載っていて、興味深い。

あと、本書を読んでいて、びっくりする話が一つ。

パールズのセラピーの様子を逐語記録した"Gestalt Therapy Verbatim"(1969)の翻訳が、ナカニシヤ出版から『ゲシュタルト療法逐語録』(仮)として、今年出る予定だという。 この本、原書を持っているけれど、なかなか読みでがあって、読み進めなかったので、うれしい話だ。 そもそも、ゲシュタルト療法の本は、ちゃんとした日本語の本がほとんどないので、一つでも増えるとありがたい。 あと、個人的には、パールズ、ヘッフェリン、グッドマンの"Gestalt Therapy"(1951)の翻訳も出るとうれしい。

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