グルジェフの残影
ちょっと旅立ってしまったので、重くて旅行には向かない"Programming in Objective-C"はお休み。 しばらく文庫の紹介に。
小森健太朗著、『グルジェフの残影』、文春文庫、2006年を読む。
本書は、『Gの残影』を文庫化した作品。 グルジェフに帰依していくウスペンスキーを、ウスペンスキーに心酔する男の眼から見た物語である。 そして、物語の本当に終わりになって殺人事件とその謎解きが行なわれるが、そこから物語全体の謎へと逆流していく物語でもある。
物語の語り手は、ウスペンスキーが「人生のやり直しとその失敗」として書いた「イヴァン・オソーキンの不思議な生涯」の主人公にちなんでイヴァン・オスロフと名付けられた架空の人物である。 そして、帝政ロシアの崩壊の中、ウスペンスキーがどのような遍歴を辿ったのかが、本書のメインテーマとなる。
「どこかに実践的な真の叡智を伝えてきたグループが存在する」というウスペンスキーの確信が、グルジェフとの蜜月を招く。 グルジェフの言っていることは乱暴で、それでいて何か凄いものを感じさせるところがあり、度々、弟子を試みにあわせる。 弟子たちは、グルジェフが実は山師で低俗な人物なのか、それとも深遠な叡智を持ち、弟子たちの成長のために敢えて逆説的な試みにあわせているのか区別することができない。 麻原彰晃のマハームドラーや、ラジニーシの試みと、この構造は非常によく似ている。
それはともかく、文庫の帯の「二十世紀最大の神秘思想家が遺した「グルジェフ・コード」が世界の謎を解きあかす。」というのは、ちょっと違うような。
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