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2007.03.13

鉄コン筋クリート

既に公開されて3ヶ月ほど経過した作品だが、映画「鉄コン筋クリート」を観に行った。

これは非常によくできたアニメーションだと思う。 原作の絵とは異なっているものの、アニメーションらしい表現として完成していると思った。

先日観た「秒速5センチメートル」は美術は秀逸だったが、本作を観てしまうと全体的にアニメーションとして相当に負けていると思う。

個人的には、刺激が強すぎて、とても作品をじっくり味わう境地に到達できなかったことが残念。 見る人をかなり選ぶ作品だと思う。 プリミティブな力が、逃げないでがっちり表現されていたのには感動した。

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2007.03.12

秒速5センチメートル

新海誠監督作品、「秒速5センチメートル」、コミックスウェーブを観る。

本作品は、劇場用の連作短編アニメ作品。 全部で60分程度。 美しい想い出と時間のもたらす長い距離を描いた作品だった。

先週から公開され、2週目の日曜日の最初の上映は、それなりにゆったりと観ることができる状態だった。

新海誠作品の特徴と言えば、「切ない思い」があると思う。 それから、「雲のむこう、約束の場所」以降、実際の風景のロケにもとづく、どこか懐かしく美しい光景のもとで繰り広げられる、「あの日」の物語により、評価を受けてきたのだと思う。 本作でも、その部分は十分発揮されている。

しかし、本当にやりたいことは何だったのかということと、作品の表現という意味では、結構、ミスマッチなのでは、と思わされた。 本作では、「雲のむこう」で暗示的に示されていたものが、テーマとして明確に描かれている。 もしも、それを単独で話したり提示したりすれば、おそらくまったくウケないだろう。

ウケのよい部分によって引き寄せ、その結果、見せられるものは、わたし個人にとってはあまりに納得のいくものではあったのだが、いずれにせよ、あまりに裏腹なものだ。

アニメ映画を見に行って、こんなもの見てちゃだめなんですとか、現実に帰れと言われたりとかとは、ちょっと違うが、ある種、期待に対する裏切りというか、得意とする表現とやりたいことがマッチしていないというか、そんな感想を抱いた。

ある意味、これをやってしまったことで、次回作がどうなるのか、非常に楽しみ。

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2007.03.05

水はなんにも知らないよ

左巻健男著、『水はなんにも知らないよ』、ディスカヴァー21、2007年を読む。

水が「ありがとう」や「ばかやろう」などの言葉に反応して結晶がきれいになったり、ならなかったりするという江本勝の『水からの伝言』、いわゆる『水伝』が、小学校などの道徳の教材として使われてしまっているという問題がある。

『水からの伝言』に関わる授業事例は、TOSS(教育技術法則化運動)による指導事例として過去に公開されていた。 また、河合隼雄とはカウンセリングという土俵では対極な全人的なアプローチを好む國分康孝の弟子で、現在はトランスパーソナル心理学のエラい人諸富祥彦の関わったエンカウンターを授業に導入しようという本がいろいろあるが、最近出版されたその内の1冊(参考: 「小学校「道徳シート」とエンカウンターで進める道徳 高学年」について考える)などで採用されていたりする。

そんな『水からの伝言』をはじめたとした、水に関する疑似科学の間違いを紹介し、水に関する知識を身近なところから学ぶことができるおもしろい本が、本書『水はなんにも知らないよ』だ。

いわゆる「水商売」は、ニューエイジなビリーバーの間では、よく行われている。 たとえば、先日、東京地裁で極めて画期的な判決で敗訴した自己啓発セミナーから発展したホームオブハートとトシオフィスがある。 ホームオブハートの主催者MASAYAは、以前、「リゾート開発と自己啓発セミナーだった頃」「MASAYAの真実」で取り上げたが、『水はなんにも知らないよ』で取り上げられている他ならないπウォーターなどの「水商売」に入れ込んでいた。

わたしの知人で、よりによって自己啓発セミナーのスタッフになってしまった人物は、セミナーがつぶれると「水商売」に手を出したと風の便りで聞いた。

MLMとしても盛んで、ルルドの泉やら神水としてゲルマニウム(飲むと健康によくなさそうなことは国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報にも載っている)を含むという水や、波動や磁化やクラスターが特殊処理されたとかいう水が、売られていたりする。

自己啓発セミナーの元トレーナーで独立した人物は、自分で作ったセミナーがつぶれてからは、波動に興味を持っていた。

また、怖い言葉で不安を煽って売りつけるなどの浄水器ビジネスも無視できない問題で、ペットボトル飲料ばかりでほとんど自宅の蛇口から水を飲まなそうな人たちにさえ、消費者被害が出るほど深刻だ。

これらの水や浄水器のほんとのところも『水はなんにも知らないよ』に書かれているので参考になるだろう。

ところが、そんな『水はなんにも知らないよ』の出版社は、他でもない、自己啓発セミナーのiBD(it's a Beautiful Day!)に関連するディスカヴァー21である。 これは非常に残念なことだと思う。

わたしには、ディスカヴァー21の本には、iBDセミナーの紹介が巻末についていたりしたことも、記憶に強く残っている。

iBDは過去のことなのだろうか。

たとえば、代表取締役の伊藤守による、1993年初版で現在でも売られている著書『今日を楽しむための100の言葉』の「はじめに」には次のように書かれている。

本書は私が主催するiBDセミナーに参加している
他のメンバーから私が学んだこと、そして私が直接体験したこと、
気づいたことをもとにして創られました。

これ以降にもiBDのセミナーの良さを伝えようとする文章が書かれている。 そして、『水はなんにも知らないよ』の編集者である千葉正幸氏の名前も、『今日を楽しむための100の言葉』の奥付けのcreative groupの筆頭に挙げられている。

伊藤守のブログにも、iBDの25周年にあたる2005年、その2月26日に「今日はすばらしい」(つまり「it's a Beautiful Day!」)というエントリーもある。

知らないことは誰にでもある。 ニセ科学に関する取り組みとして、この後、このことにどう対応していくのか興味が尽きない。

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