2007.03.05

水はなんにも知らないよ

左巻健男著、『水はなんにも知らないよ』、ディスカヴァー21、2007年を読む。

水が「ありがとう」や「ばかやろう」などの言葉に反応して結晶がきれいになったり、ならなかったりするという江本勝の『水からの伝言』、いわゆる『水伝』が、小学校などの道徳の教材として使われてしまっているという問題がある。

『水からの伝言』に関わる授業事例は、TOSS(教育技術法則化運動)による指導事例として過去に公開されていた。 また、河合隼雄とはカウンセリングという土俵では対極な全人的なアプローチを好む國分康孝の弟子で、現在はトランスパーソナル心理学のエラい人諸富祥彦の関わったエンカウンターを授業に導入しようという本がいろいろあるが、最近出版されたその内の1冊(参考: 「小学校「道徳シート」とエンカウンターで進める道徳 高学年」について考える)などで採用されていたりする。

そんな『水からの伝言』をはじめたとした、水に関する疑似科学の間違いを紹介し、水に関する知識を身近なところから学ぶことができるおもしろい本が、本書『水はなんにも知らないよ』だ。

いわゆる「水商売」は、ニューエイジなビリーバーの間では、よく行われている。 たとえば、先日、東京地裁で極めて画期的な判決で敗訴した自己啓発セミナーから発展したホームオブハートとトシオフィスがある。 ホームオブハートの主催者MASAYAは、以前、「リゾート開発と自己啓発セミナーだった頃」「MASAYAの真実」で取り上げたが、『水はなんにも知らないよ』で取り上げられている他ならないπウォーターなどの「水商売」に入れ込んでいた。

わたしの知人で、よりによって自己啓発セミナーのスタッフになってしまった人物は、セミナーがつぶれると「水商売」に手を出したと風の便りで聞いた。

MLMとしても盛んで、ルルドの泉やら神水としてゲルマニウム(飲むと健康によくなさそうなことは国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報にも載っている)を含むという水や、波動や磁化やクラスターが特殊処理されたとかいう水が、売られていたりする。

自己啓発セミナーの元トレーナーで独立した人物は、自分で作ったセミナーがつぶれてからは、波動に興味を持っていた。

また、怖い言葉で不安を煽って売りつけるなどの浄水器ビジネスも無視できない問題で、ペットボトル飲料ばかりでほとんど自宅の蛇口から水を飲まなそうな人たちにさえ、消費者被害が出るほど深刻だ。

これらの水や浄水器のほんとのところも『水はなんにも知らないよ』に書かれているので参考になるだろう。

ところが、そんな『水はなんにも知らないよ』の出版社は、他でもない、自己啓発セミナーのiBD(it's a Beautiful Day!)に関連するディスカヴァー21である。 これは非常に残念なことだと思う。

わたしには、ディスカヴァー21の本には、iBDセミナーの紹介が巻末についていたりしたことも、記憶に強く残っている。

iBDは過去のことなのだろうか。

たとえば、代表取締役の伊藤守による、1993年初版で現在でも売られている著書『今日を楽しむための100の言葉』の「はじめに」には次のように書かれている。

本書は私が主催するiBDセミナーに参加している
他のメンバーから私が学んだこと、そして私が直接体験したこと、
気づいたことをもとにして創られました。

これ以降にもiBDのセミナーの良さを伝えようとする文章が書かれている。 そして、『水はなんにも知らないよ』の編集者である千葉正幸氏の名前も、『今日を楽しむための100の言葉』の奥付けのcreative groupの筆頭に挙げられている。

伊藤守のブログにも、iBDの25周年にあたる2005年、その2月26日に「今日はすばらしい」(つまり「it's a Beautiful Day!」)というエントリーもある。

知らないことは誰にでもある。 ニセ科学に関する取り組みとして、この後、このことにどう対応していくのか興味が尽きない。

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2006.09.18

ライフダイナミックス大阪の受講生だった松永英明 -- オウム・アレフ(アーレフ)の物語

オウム真理教の元サマナで、かつて河上イチローの名でネットで活躍していたことが明らかになった松永英明だが、しばらくの間、結核をこじらせて入院していたようだ。 9月に入ってから退院し、オウム時代を回顧する「オウム・アレフ(アーレフ)の物語」が再開した。

この一連の記事は、かつて真理を求め、カルティックな世界にさえ身を置いてしまった、同世代のわたしには他人ごととはとても思えない記述がたくさんある。 オカルト、SF、ファンタジー、幸福の科学VS.オウム真理教、「原始」なるものへの憧憬…。 読んでいて大いに反省させられる。

そのPART3-6は「ライフダイナミックス」だった。 大学2年生の秋に受講したらしいが、松永英明は1969年の2月24日生まれで、1年浪人しているので、これは1989年の終わり頃になるのだろうか。

ライフダイナミックスの自己啓発セミナーのBasic、Advanceの受講記録である二澤雅喜、島田裕巳の『洗脳体験』は、いくつかのバージョンが存在している。 その最初のバージョンである『人格改造! -- 都市に増殖する闇のネットワーク「自己開発セミナー」潜入体験記』が、JICCブックレットとしてJICC出版局から出たのは1990年の3月である。 松永英明の受講は、この出版より少し前のことになる。 当時は、非常にたくさんのセミナー会社が急速に乱立し、週刊誌などの記事になりはじめていた。

受講した会社は、ライフダイナミックスの大阪。 トレーナーは誰だったのだろうか。

ちなみにライフダイナミックスの大阪と言えば、後に成田のミイラ事件を起こしたライフスペースが1983年に分離している。 ライフスペースからは、1989年の終わりに高橋弘二の『生きるのが楽になる本』(PHP)が出版されていたりする。

受講したセミナーの内容は、ライフダイナミックスだけあって、非常に典型的なもののように思える。 松永英明が、Basicの内容を自分がいかに「思いこみにとらわれている」かということを観るものであるとまとめているところは、その後の道を暗示するようでもあって興味深かった。 また、なんだかんだと言っても、結局、結果としてアシスタントなどまでやってしまうあたり、自分の優秀さを示したいという気持ちみたいなものだろうか、ふとそんな気もしてきて、とにかく非常に考えさせられた。

それからライフダイナミックスの長所と短所を書いた部分には、次のような表現がある。

ただ、ライフダイナミックスが、本来「効果的な生き方・考え方」を見つけだし、効果的で他の人たちに貢献できる生き方をしていくことが目的のはずなのに、それがいつの間にか「この素晴らしい体験をして効果的な生き方をさせる」こと、イコール「このセミナーにできるだけ多くの人を参加させること」にすり替えられ、結局「勧誘」が中心的活動になってしまうというのが、最大の問題だと思った。

「勧誘」へのすり替えはその通りだと思うけれど、「本来「効果的な生き方・考え方」を見つけだし、効果的で他の人たちに貢献できる生き方をしていくことが目的」というのは、「本来」というよりは実際にはむしろ「セミナーの建前」に近いものではないかと個人的には思った。

それから、長所と短所の部分には、書いたものの根源に関わる何かが感じられるような気がしたが(妄想とも言う)、これはまた個人的な別の話。

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謎すぎるダイレクトメールは海外宝くじ詐欺と関係があるのか!?

謎なダイレクトメールが届いた。

2006091801

2006091802

無料
日本の長者番付に名を連ねるチャンスです

しかし、差出人が…

PO Box 36113, Winnellie NT 0821 AUSTRALIA

オーストラリア? しかも私書箱? それ以上の情報なし??

ためしに開封してみた。

2006091803

未請求ギフトのお知らせ
重要: この未請求ギフトチャンスのお届け手続きに同意していただける場合は、返信料支払い済み封筒(同封)でこの通知書を返送してください。優先お届け手続きは、こちらにあなたの通知書が届き次第、直ちに開始されます。

ギフト価値

無料ギフト保証:
特別なギフトがあなたのために予約されています、完全無料で、しかも何の義務もありません。

許可する旨の署名
無料ギフトの確認者: A. Fowler A. ファウラー

なんのこっちゃ? そもそも「A. ファウラー」って誰ですか?

2006091804_1

返信料支払い済み封筒(同封)でこの通知書を返送してくだされば、この驚くべきギフトをあなたに、しかも無料で差し上げます!
あなたには1銭も掛からず...
しかも、あなたの人生が変わるかもしれません!

これは、料金や義務がまったく課されない正真正銘のオファーです。
ご注意: 私共では、締め切り後のあなたの無料ギフトのお取り置きについては保証しかねます。

ほとんど意味不明だ。 でもって、以下が返信用封筒。

2006091805

うーん、意味不明。 ためしにいろいろ検索してみたけれど、全然マッチしない。

最後に「IBRS CCRI」(IBRS = 国際郵便料金受取人払、CCRI = 国際郵便料金受取人払業務)で検索してみたところ、オーストラリアの宝くじに関する詐欺の話を発見した。 申し込みや受け取りにかかるお金を請求されたりすることもあるらしい。 「オーストラリア 宝くじ 詐欺」などで検索するといろいろ出てきた。

とは言え、今回のダイレクトメールには、「宝くじ」とも、「当選」したとも書いてない。 それどころか、私書箱で、相手の名前さえ不明だ。

海外宝くじ詐欺業界って、いくところまでいっちゃったんでしょうか?  いくらなんでも、あやしすぎるし、無茶なような気が。

参考: 国民生活センター ダイレクトメールを使った「海外宝くじ」に注意!

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2006.09.05

NHK趣味悠々「四国八十八ヶ所 はじめてのお遍路」

NHKの教育テレビに「趣味悠々」という番組がある。 一言で言って、中高年向きの趣味の入門番組だ。

盆栽、茶、スイミングに絵画とオーソドックスなものから、エレキギター、携帯電話なんていうのもあった。 最近では、デジタル一眼レフ、ブログ(炎上の対応は紹介していたのだろうか?)と、ITなものも取り上げられている。 この番組で取り上げられれば、市民権を得た趣味と言えるかもしれない。

それで、この「趣味悠々」の今期のラインナップになんと「四国八十八ヶ所 はじめてのお遍路」が登場した。 いやあ、もう、ここまで来ましたか。

内容は、全13回で、行き方、準備、計画の立て方、参拝の作法、宿泊、旅の魅力、思い出の残し方、トラブルシューティングといたれりつくせり。

しかし、お金もかかる。 2週間くらいの期間で、現地までの旅費を除いて、ツアーとかだと二十数万。 うーん、期間も長いかもしれないけれど、海外旅行に行くくらいの気分。 一大産業というかなんというか。

ちなみに初回放送は明日9月6日(水)の夜10時から10時25分まで。

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2006.09.04

知人とEMDR

ふと、思い立って、むかしの知人の名前で検索してみた。

するとびっくり。 EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)の本の翻訳に関わっていた。

目を左右に高速に動かしながらトラウマを想起するとなおると主張する療法EMDRと言えば、創始者のフランシーン・シャピロは、その経歴を見ると、臨床心理学の博士号はカリフォルニアのサンディエゴのProfessional School of Psychological Studiesから取得したことになっているのだけれど、この学校は非認定で、今は存在していない。 つまり、ふつうは博士と呼ばないような。 するとシャピロの最終学位はニューヨーク大学の臨床心理学ではなく英文学(博士課程単位取得退学、つまり在籍したけれど学位はとっていない)になってしまう。

ああ、遠い人になってしまったのね。 いや、遠くなったのは、わたしの方か。 うーん。

参考: フランシーン・シャピロの経歴、非認定の学校については静岡県立大学の小島茂教授の学歴ネットのホームページ

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2006.08.16

日本の四次元地帯駒木野の真実

「Spファイル」という同人誌があり、今回のコミケでは3号が販売されていた。

この特集は「日本の四次元地帯駒木野の真実」であった。 駒木野は昨年の夏に発売され、本ウェブログでも取り上げた篠田節子著、『ロズウェルなんか知らない』、講談社、2005年で登場する町である。

『ロズウェルなんか知らない』で描かれる駒木野は、UFOで村おこしの福島の飯野町のように、超常現象で村おこしに挑んだ群馬のうらぶれた温泉町だ。

この「Spファイル」の3号では、その駒木野が特集されており、村おこしの仕掛人である駒木野青年クラブのメンバーの一人で山師くさい鏑木という人物にインタビューした記事や、駒木野円盤フェスティバルの参加記録、「舟岩」に関する考察、駒木野の超常現象に関するイカレタ研究家の投稿などが掲載されている。

って、あれ? 前に調べたときに駒木野って場所はなかったと思ったんだけど…。 円盤フェスティバルの参加記録には、乗った列車名や下車駅まで書いてあるし? レイラインの解説では、駒木野の位置までおおよそわかるように書かれているし??

ええ、一瞬、だまされそうになりましたよ。

この事件が大々的にテレビなどで取り上げられていたというが、記憶に全くない。 もっとも、最近テレビは全く見ていないしなあ…。 検索しても駒木野なんて地名は出てこない…。

ついには、JR三坂駅なるものが存在しているかどうかチェックするために、検索して、特急水上1号の時刻表を確認してしまった。

ええ、おもろいです。 こういう企画。

他にも、《東日流外三郡史》とか、いろいろ楽しい記事があった。 今、オカルト系でおもろしろい同人誌かも。 ちなみに付録もついていて、前号の付録に至っては「コンタクティのビリー・マイヤーがインチキ撮影に使った円盤のペーパークラフトwith釣り糸」だった。

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2006.08.14

グルジェフの残影

ちょっと旅立ってしまったので、重くて旅行には向かない"Programming in Objective-C"はお休み。 しばらく文庫の紹介に。

小森健太朗著、『グルジェフの残影』、文春文庫、2006年を読む。

本書は、『Gの残影』を文庫化した作品。 グルジェフに帰依していくウスペンスキーを、ウスペンスキーに心酔する男の眼から見た物語である。 そして、物語の本当に終わりになって殺人事件とその謎解きが行なわれるが、そこから物語全体の謎へと逆流していく物語でもある。

物語の語り手は、ウスペンスキーが「人生のやり直しとその失敗」として書いた「イヴァン・オソーキンの不思議な生涯」の主人公にちなんでイヴァン・オスロフと名付けられた架空の人物である。 そして、帝政ロシアの崩壊の中、ウスペンスキーがどのような遍歴を辿ったのかが、本書のメインテーマとなる。

「どこかに実践的な真の叡智を伝えてきたグループが存在する」というウスペンスキーの確信が、グルジェフとの蜜月を招く。 グルジェフの言っていることは乱暴で、それでいて何か凄いものを感じさせるところがあり、度々、弟子を試みにあわせる。 弟子たちは、グルジェフが実は山師で低俗な人物なのか、それとも深遠な叡智を持ち、弟子たちの成長のために敢えて逆説的な試みにあわせているのか区別することができない。 麻原彰晃のマハームドラーや、ラジニーシの試みと、この構造は非常によく似ている。

それはともかく、文庫の帯の「二十世紀最大の神秘思想家が遺した「グルジェフ・コード」が世界の謎を解きあかす。」というのは、ちょっと違うような。

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2006.06.24

世田谷一家殺人事件

齊藤寅著、『世田谷一家殺人事件 -- 侵入者たちの告白』、草思社、2006年を読む。

本書は、2000年12月30日に起こった宮澤一家の殺人事件の犯人を特定したと主張する本。 世田谷一家殺人事件だけでなく、関連すると主張するいくつかの事件の取材を、ドキュメンタリータッチで描いている。

本書の主張は、アジアからの留学生の一部が、犯罪組織クリミナル・グループを形成しており、近年のいくつかの事件は彼らの起こした犯罪であり、世田谷一家殺人事件に関してもそうであるというものだ。 主な根拠は、指紋に関する警察筋からという情報、クリミナル・グループのメンバーからという証言などだ。

書いている人の立ち位置などによる記述の幅を考えると、本書の記述がどのくらい本当かは、犯人の検挙を待つしかないような。

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2006.06.22

世田谷一家殺人事件 本当に犯人が突きとめられたのか?

齊藤寅著、『世田谷一家殺人事件 -- 侵入者たちの告白』、草思社、2006年という本が出たらしいので、早速注文した。

世田谷一家殺人事件というと、2000年に起こった事件で未解決。 被害者のご夫妻は、最近ではコーチングな自己啓発セミナーで知り合ったという噂もあった。 その後、何人かのジャーナリストが調べてみたものの、決定打はなかった。

今回の本の著者は、ジャーナリストということになっているが、検索してみても名前が出てこないような。 もしも犯人が特定できていれば、逮捕されていてもいいわけで、その辺どうなっているのか気になるところ。

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2006.06.11

TRICK 劇場版2

「TRICK 劇場版2」を観る。

今回は、自称霊能者の女性との対決。 おもしろいかおもしろくないかと言えば、期待は裏切らない形に仕上がってはいた。 しかし、既に自称霊能力者とは何回も対決しているし、消失と瞬間移動系の話も新鮮さがなくなってきている。 トリックそのものの方ももっとがんばって欲しかったかも。

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